近所の町中華

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自宅のそばに、町中華が潰れてはまた新たに町中華が入る物件がある。今の家には10年ちょっと住んでいるのだが、その間に4回くらいは入れ替わっただろうか。すべて町中華だ。率直に言ってしまうとあまりぱっとしない外観がいつも変わらないので、店名を変えているだけなのかとも思ったが、その都度、中にいる人も入れ替わっているようだ。

駅から少し離れた場所にあり、周りは住宅地なので、ここで営業を続けるのは難しいのだろう。いまの店舗が入った時も「また、中華か......他のジャンルでチャレンジした方が良いのではないだろうか」と思っていた。

それでも、新しい店舗になったら一度は入って食べてみる。

すると、今回は明らかに味のレベルが違かった。油淋鶏を頼んだのだが、衣はカラッと揚がっていて肉は柔らかくソースの甘みがちょうど良い。油淋鶏ってこんなに美味しくできるのかと驚いた。それ以来、その町中華の油淋鶏を頻繁に食べている。酢豚や麻婆豆腐、炒飯などもとても美味しい。じゃがいもの干鍋も絶品だ。

ある日、その町中華のメニューが作り直されて料理人である店主のプロフィールが掲載された。店主は大きなホテルのシェフをしていた立派な経歴の持ち主だった。そういえば、食器が上品なものを使っていたり、盛り付けがいつも綺麗だったりと町中華のイメージにそぐわないところに少し違和感を感じていた。でも、値段は町中華の値段だ。

夕飯の支度が面倒な日には、外で働いている配偶者が帰りがけにその町中華の弁当をよく買ってきてくれる。弁当を食べながら「今日はお客さんが全然いなかったよ」とか「今日はけっこうお客さんが入っていて賑やかだった」とかを聞きながら、最後はいつも「長く続いてほしいね」とお互いに言い合う。

そうは言いながらも、その場所で繰り返し店舗が入れ替わるのを見ているから、そんなに遠くない将来にその町中華も閉店してしまうのだろうと思っていた。

でも、その町中華が出来てからもう4,5年が経った。

その町中華ができた年を正確には覚えていないので、もしかしたらもう少し長いかもしれない。直近の4,5年ということは、あのパンデミックも乗り越えている。

行くと必ずいるような常連客を見たことがあるわけでもなく、満員で店に入れなかったこともない。でも、自分たちと同じようにその町中華の料理を食べて「長く続いてほしいね」と思っている人が他にもいるのだろう。

駅から少し離れた場所にある、外観はあまりぱっとしない町中華を自分たちと同じように好んでいる人たちがいると思うと少し嬉しい気持ちになる。