今週は久しぶりに映画を観に行かなかった。映画を観に行こうと思ってチケットを取っていた日に親戚の不幸があり、とても出かける気になれなかったためだ。義母の弟、配偶者の叔父で「2泊3日で手術を受けて、来月は田舎に帰省するよ」といった感じで受けた手術の後に病状が悪化したために亡くなってしまったそうで、こちらとしては予兆を感じることが全然なかったので突然の訃報だった。今でもあまりピンと来ていない。
姉(義母)のことを気にかけて、よく連絡をしてくれる明るくて優しい人だった。自分たち夫婦が応援しているチームのことを気にかけてくれていて試合のたびに、何かしら連絡をくれていた。スポーツを観るのが好きな人だったのでオリンピックも楽しみにしていただろうな。自分とは血縁はないけれど、会うとニコニコしながら話してくれて、叔父さんの田舎がどんなに良いところかをたくさん話してくれた。いつか一緒に田舎に、という話をしていたけれど結局行かないままになってしまった。突然すぎて実感がわかないな。
『夏物語』川上未映子
芥川賞を受賞した『乳と卵』に加筆修正したものを前編、その後の主人公を中心としたストーリーを後編とした女性たちの物語。前編は『乳と卵』ほぼそのままだと思うのだが、久しぶりに読むと自分自身年齢を重ねたこともあり感じるものが違っていた。以前は主人公と姉の姉妹の距離感が印象に残ったのだが、今回は主人公の姪の緑子の心情描写が深く印象に残った。どちらにしても良い小説だと思う。
後編は、そこから8年たった主人公を中心とした物語となり姉と姪は完全に脇役となる。出産を望むが、パートナーはおらず、性行為自体に抵抗がある主人公が出会う人たちとの関わりの中で生殖倫理について悩み抜くという内容なのだが、正直なところ肩透かしというか、そこに落としてしまうのかという結末だった。著者の言いたいことを言っただけで、それはけっこうありきたりな結論であった。ありきたりであることが重要なのかもしれないが、『乳と卵』の出来からしてみると少し残念だった。
『ファーストラヴ』島本理生
オーディオブックで聴いた。朗読は松井玲奈が担当している。松井玲奈は島本理生の『よだかの片想い』の映画化の際に主演を務めている。たしか、島本理生のファンである松井玲奈からのアプローチで実現したキャスティングだったはず。良い映画だったし、松井玲奈の演技もとても良かったと記憶している。その縁での朗読担当なのだろう。
この作品も映画化されているそうだが、それはまだ観ていない。
父親を刺殺した女子大生の事件に関わる臨床心理士である主人公と、主人公と家族関係がある担当弁護士が、その事件を探る過程で虐待行為が人格形成に与える影響を描き出す。主人公と弁護士にも同様の虐待を受けていた経験がある。作中で書かれている心理的虐待行為は、ステレオタイプな直接手を下すだといったものではなく、親や関わった人たちにもその自覚があまりないところに救いがない。親が子に心理的虐待行為を犯してしまう背景には歪な家族関係や親自身が過去に虐待行為を受けていたと匂わせるものがあり、分かりやすくは表に現れない。意図的に傷つけることを目的としてやっているわけでもないので、法によって保護することも難しそうだ。最後は爽やかに終わらせているのだけれど、親も子も虐待だと認識できない虐待行為の重たさに自分はあまり良い読後感は得られなかった。
次週
葬儀がある
Euroも終わったので生活リズムを立て直す