W18 2024.4.29 - 5.5 『辰巳』『私たちはいつから「孤独」になったのか』

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4月が終わった。4月はランニングは少なく合計96km、映画は9本、本は2冊。読書があまりできていない。5月はもう少し読めるだろうか。

5月の連休が始まって、自分はカレンダーは関係ないのだけれどのんびりと過ごしている。配偶者と一緒に映画に行く予定だったのだが、自分が熱を出してしまっていけなかった。この一年くらい体調を崩すことが多くて困る。

今週はU23アジア杯が大詰めでそれを見るために生活が不規則になったせいもあるかもしれない。振り返ると体調を崩すのは生活が不規則になっている時ばかりな気もする。また規則正しい生活に戻す努力をしよう。

5月は推しチームの試合が8試合ある。リーグ戦を見る前には対戦相手の直近3試合を見て予習をしているのでなかなか忙しい。SNS上には毎節全チームの試合を見ている人もいて、驚くばかりだ。

映画『辰巳』

話題になっているジャパニーズ・ノワール。教訓めいたものやテーマとかはあまり考えずに頭を空っぽにして観られるエンタメ作品だと感じた。俳優陣の演技と全体の作りがとにかく上手くてのめり込める。演者・裏方双方の技術力の高い作品だ。

ヤクザもの同士の言い合いが加熱して殴り合いに発展するシーンで、語彙力の少なさゆえに言い争いがとまらなくなってしまうあたりとかリアリティがあった。以前読んだ国語力に関する本で、川崎で起きた中学生殺害事件では語彙力の少なさ(「むかつく」「殺す」などの言葉が繰り返される)ゆえに自らが持つ感情をうまく相手に伝えることができず言い合いがループしてしまい収拾がつかなくなったことが書かれていたのが印象に残っているのだが、まさにその様子だった。

竜士役のぶっとびっぷりやばかったなー

『私たちはいつから「孤独」になったのか』

読み応えのある刺激的な本だった。今後の自分の考えに大きな影響を与えてくれるものとなりそうだ。

「孤独」のワードを英語で表すとソリチュード(solitude)またはロンリネス(loneliness)になるが、ソリチュードとロンリネスでは意味合いが異なる。ソリチュードは神との対話や思索のために敢えて独りになるという精神修養のひとつといったポジティブな意味を持つが、ロンリネスは欠乏を特徴とするネガティブな意味を持つ。欠乏の認識は、自分が何を欲しているかとともに、他人がおそらく手にしているものを意識するところから始まる。

欧米において、ロンリネスという言葉が意味をもって現れ始めたのは19世紀の初頭、世の中が生産性を重視する消費思考の個人主義社会へとなっていった頃で、社交性や世俗主義という概念が重要になってきた時期だ。

大量消費主義やグローバル化が進んだことにより、世の一般的な価値観が変わっていき、ひとりでいることが悪であるという言説が作り上げられていく。それは、消費行動を促進させることにつながるのでどんどん加速していく。本作のなかでは"ソウルメイト"という作り上げられた幻想が取り上げられていた。理想の相手に巡り会えない限り自己は不完全であるという考え方が孤独感を生み出すのだ。広告コピーやテレビドラマなどにはこの手法に則ったものがいまでも見受けられる。 

生産性が重要視される消費者志向の個人主義社会の中で、孤独は生物学的に避けられないものだと人々に思わせることによって、実際には孤独は文化や環境がもたらす産物であり、人間の条件として自然的なものではないという事実が無視されている。

SNSにおける考察では、FOMO(Fear of missing out)取り残されることへの恐れが挙げられている。SNSで常に繋がっていることの問題点のひとつとして、誰もが自己をできるだけよく見せることが習慣化しているために、他人の方が自分よりもよい生活をしているように見えがちであり、孤立している場合は自己充足的なマイナス思考のスパイラルに陥ってしまう。スピードと拡散力が個人の情動を不安定にさせる。SNSが若者たちにとって良いか悪いかなどと心配するより、SNSが仮想世界と現実世界を1つにつなげるコミュニティーに新たな意味を生み出せるかといった問題について考えた方が生産的だろうというのが筆者の論ずるところで、それには納得する。だが、パンデミックを経た世の中でそれは以前よりも難しいことになっているような気がする。(本作は2019年に書かれている)

この本を読んだことで、感情は全てが生来もっているものではなく環境によって作り上げられている物もあるのだと考えることで視点が大きく変わる気がする。これから、感情史についてもっと学んでみたいと思う。

次週

  • 感情史にまつわる本を読んでいこうと思う

  • 『水深ゼロメートルから』を観る予定

  • 世田谷美術館でやっている民藝の展覧会と森美術館のアフロ民藝を見に行きたい。