"雪折"

ながえ
·

暦の上では春分を迎えましたが、日の入り頃から雪が降り始めました。

Laputaの雪を連想させる曲と言えば『Breath』ですよね。

Kouichiさん作曲・akiちゃんの作詞で、リリースされたシングルの中でも特に人気が高い楽曲のひとつです。ラストライブの一番最後に演奏され、本当の雪が降り始めた演出には涙を誘われました。

今回はそんな曲の歌詞に使われた言葉の話を少し。

Breath』の歌詞の中に、とても印象的な言葉の使われ方があります。それは「雪折」と書いて「あしおと」と読ませている所。

雪折」は昔から使われている日本語で「ゆきをり」「雪折れ」等とも書かれ、調べてみると平安時代の後期には既に使われていたようです。俳句では「雪折(ゆきおれ・ゆきをれ)」が冬の終わりの季語として使われています。

降り積もった雪によって木々や竹などの枝や幹が折れたり、または折れて落ちたり倒れたりした状態を示す言葉で、古くは竹や松に合わせて多く使われていました。竹や松は冬季も落葉が無く、それ故に葉に雪が付きやすく、重みにさらされて枝が折れやすかったのです。冬を前に 松の木の「雪吊り」や杉の木へ「冬囲い」といった、枝折れ・幹折れ予防の準備をするのはこの為ですね。

雪折」に「」を組み合わせた「雪折の聲(こえ)」といった使われ方もされたりします。雪の重みで木々の枝葉が撓って折れ、雪ごと落ちる「」を「」に例えるとは、何とも趣がありますね。

一方で「雪折」にはもうひとつの意味合いで使われる事もありました……それは「早過ぎる死」。夭逝した我が子を「雪折の子」などと記したものが江戸時代あたりから見られるといいます。

冬を「生命が死に絶える季節」として表すことは世界中に見られますが、『Breath』の歌詞に「雪化粧」を「死化粧」と例えられて表現されるのは、そういった明確な「」の意味合いも込められているからなのでしょう。

それでは何故、死を連想させる「雪折」という言葉をあえて「あしおと」と読ませているのでしょうか?

雪によって折れた枝葉や朽ち果てた木々は地に落ち、雪解けによってそれらが地面に残されると、枝は鳥や動物たちの巣作りなどに使われたり、倒木によって光が差し込んだ場所から植物が発芽し始めます。冬の「雪折」による木々たちの「」から、春が近付くにつれ多くの命の「」に繋がって行くのですよね。

雪折(あしおと)」とは「春の跫(あしおと)」、『Breath』とは「春の息吹」。終盤の芽吹きに繋がって行く歌詞にはそんな意味合いが込められているようで、とても美しい表現方法だな……と私は思います。

凍える吐息」が「あたたかい息吹」に変わる季節は、もうすぐですね。

@k_nagae_tkac
Laputaの想い出話ばかりしている(ネット上では珍しい後期Laputaを観続けた廃人)。固定した記事以外は何の役にも立たないので読まなくていいのよ。 【雑談用アカウント】→ fedibird.com/@k_nagae_tkac