魔法骨董収容記録_1

マキムラ
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2000年7月2日 10時頃

収容物 (セットアップ)

『結んだものを動かしてしまう鈴』

(鳴るもの・運動・人はそれを呪いや奇跡と呼んだ)

リーディング

人間、あるいは世界について何かを学んだ。何がきっかけになったのだろう?(黒K)

おれは命になりたかったのだ

命になればミカとずっと一緒にいることが出来たのに

でもそんなことに意味なんてなかったんだ

成功したってただのおままごとなんだ

俺の手のひらで踊っているだけなんだ

だから、もういいんだ

ゆっくりと、眠らせてくれないか

すべてを忘れた、ただの間抜けな音を鳴らす鈴にしてくれ

長い間放置されたり、しまわれたりしていた。どのくらいの時間だったのだろう?また、何がその状況を変えたのだろう?(黒9)

その日、おれはミカを動かそうと、スコップをカンカンと動かして墓まで来た。久しぶりにあったミカはボロボロだったけど俺は見た目なんざ気にしない。ぎこちないながらも歩かせることは出来た。次はおしゃべりだ。だが、うまく声が出せない。散々練習してきたのに。変な音しか出ない。

そうしているうちに、神社の方から人間が走ってきて、なにか叫んだんだ。俺は手を振って挨拶したんだが、そいつは化け物でも見るような形相だったぜ、失礼だよな。それからそいつはミカを攻撃して、俺は頑張って避けて…なにか強い光が走って、それからは覚えていない。

気づいたら、真っ暗で、だけどふわふわなものの中にいた。ふわふわを動かそうとしたが、何かにぶつかるばかりでどうしようもなかった。仕方ないから復習さ。次は襲われないような対策を考えるか。もしかしたら、服を着ていなかったせいか?喋り方も練習しないと。どうにも、時間はありそうだったから。

他の魔法の道具との思い出。どんなことを話したのだろう?(赤8)

おれが年上の人間に対してどうすれば好ましく思われるかについての戦略を立てていた頃、突然箱が空き、知らない男がうつろな目で俺を覗き込んでいた。でも、直ぐに目を離して何処かへ歩いていった。

久しぶりに外に出ると倉庫のようなところで、男がぼんやりいろんな箱を開け続けている。あなた、と声が聞こえてきて見てみると、ゴシックな衣装をまとった、ミカくらいの大きさのドールがこちらを見ていた。話を聞くと、こんな事を言っていた。

  • このドールの目は少しの間だけ人間を操ることができる

  • 元居た場所に帰りたい

  • 男を操作して、脱走に使えそうなものがないか調べていた

おれは、ちょうどいいとそいつのところまでにじり寄って、ドール、名前はフランソワ、を動かすことに成功した。そうしておれたちは倉庫を抜け出し、フランソワの体を元の場所まで運んだんだ。

そのあとも色々あったけど、ミカに関係ない話だし、フランソワはもう居ない。俺たちは、本当はあそこから出るべきではなかったんだろう。二人で永遠に話しているのが正解だったのだ。でも、おれにもフランソワにも…会いたい人がいた。

これ以上は、話したくない。

エンディング(赤)

あなたが好きになったものは?

ミカ。

次に引き取られるなら、どんな人がいい?

もう誰にも会いたくない。

おれはもう消える。でも、だれかを愛してしまえば、またおれがうまれるんだ。きっと。

その言葉を最後に、その鈴は語らなくなったし、音もならなくなった。

私は、彼をどうするべきかしばらく悩んだ。人間にはおわりがある。彼には?私は彼に、何度おわりある愛を体験させればいいのだろう。

私は10のうちの1だけ、願いを聞かないことにした。

彼を窓際で埃を被っている黒猫の置物の首にくくりつけた。この窓が面する通りは、ほとんど人通りがない。だから、誰かを見ることもなければ、愛することもないだろう。それでももし、誰かが通り、そして彼がその人を愛することがあったなら…それはきっと運命で、次の行先だろう。

ずるいかな。ごめんね。

ーー黒猫の置物は今日も、誰も通らない外を眺めている。

@kaedemakimura
変なところでこだわりが強く、恥ずかしさに振り回されている。