ルマンドを見て思い出した話。
私のおじいちゃんとおばあちゃんは朝5時くらいに起きていた。
朝7時半くらいにやることを終えて、コーヒーを沸かして二人はソファに座る。
コーヒーメーカーで作ったコーヒーはいつも濃かった。
コーヒーメーカーが壊れてからはインスタントコーヒーだったけど、それも濃かった。
朝の連続テレビ小説を見て、そのまま10時くらいまでのんびりしている。
コーヒーのお供はいつもココナッツサブレかMARIEだった。
長期休みのときはその時間でも家にいたので、二人がテレビを見ているところに一緒にいた。
中学生までコーヒーは飲ませてもらえなかったので、いつもココアをつくってもらっていた。
たまにココナッツサブレをもらった。
MARIEは好きじゃなかったのでもらわなかった。
私はおばあちゃんが買ってくるおやつはいつも古臭い感じがしていた。
たぶん、お母さんの方のおばあちゃんがいつもお洒落なおやつを用意してくれていたからだと思う。
と言っても、お母さんの方のおばあちゃんと会うのは半年に一回だったから、もてなすためにお洒落なおやつを用意してくれていたんだと思う。
でもそんなことは小中学生には想像できない。
だから、実家にいるおばあちゃんが出すものは古臭い感じが余計にしていた。
ココナッツサブレもMARIEも古臭いなぁ、なんて思っていた。
ある日、おばあちゃんにおやつが欲しいと言ったら紫色のビニール袋のおやつを出してくれた。
包装の色がきれいだなと思った。
「これおいしいよ、食べてみぃ」
と言われ、個包装を開けて食べてみた。
ぱりぱりとした食感がなんだか新鮮でおいしかった。
「これおいしい」というと、
「おじいさんとのおやつに買ったけど、かほちゃんが気に入ったならあげるよ」といわれ、
すぐに食べてしまった。
たぶんこれが、ルマンドとの出会いだった、気がする。
おばあちゃんが渡してくれて初めて食べた、気がする。
おじいちゃんとのおやつに買ってきていた、気がする。
記憶がとても曖昧だ。
でも、おばあちゃんがおやつ入れから出して渡してくれたのは覚えている。
おばあちゃんがルマンドを手にもって私に見せてくれた瞬間は覚えている。
おばあちゃんに「ルマンドを教えてくれたのはおばあちゃんだっけ?」と聞きたいけれど、
おばあちゃんはもういないのでどうしようもない。
生きている間にいままでのこと、振り返ればよかったね。
おばあちゃんのから揚げがおいしかったから、教えてもらえばよかったね。
なんて思う夜中。
おばあちゃんは私の夢によく出てきてくれるから、教えてほしいなぁ。
ルマンド、おいしいなぁ……。