夜。夜は暗い。暗いは夜。
篝火がたくさん。それなのに暗い。光を投げかけない篝火。
じっとりと暑い。自分から滲み出た汗か、大気中の水分が纏わりついたのか。不快だ。
ずいぶんと高い位置から降ってくる、葉擦れ。ここが、密林の中だと知っている。
足下は硬くて平らで湿っている。岩。岩盤。裸足。
大きな容れ物から溢れ出た水が、しょろしょろと流れてゆく。
一センチにも満たない水深に浸された、足の縁だけがつめたい。
あっちの、櫓の上にのぼりたい。すこしでいい、休みたい。
一歩踏み出して、蛇を踏んだ。
わたしの土踏まずにぴったり沿うほどの太さ。わたしの冷やされた足よりも低い体温。
肉と、肉に収められた骨を踏みつけた。触覚の鮮やかさ。