蛇を踏む

kaisla
·

夜。夜は暗い。暗いは夜。

篝火がたくさん。それなのに暗い。光を投げかけない篝火。

じっとりと暑い。自分から滲み出た汗か、大気中の水分が纏わりついたのか。不快だ。

ずいぶんと高い位置から降ってくる、葉擦れ。ここが、密林の中だと知っている。

足下は硬くて平らで湿っている。岩。岩盤。裸足。

大きな容れ物から溢れ出た水が、しょろしょろと流れてゆく。

一センチにも満たない水深に浸された、足の縁だけがつめたい。

あっちの、櫓の上にのぼりたい。すこしでいい、休みたい。

一歩踏み出して、蛇を踏んだ。

わたしの土踏まずにぴったり沿うほどの太さ。わたしの冷やされた足よりも低い体温。

肉と、肉に収められた骨を踏みつけた。触覚の鮮やかさ。

@kaisla
砂漠の井戸を管理する魔女、になりたい一般人。 かや児とか圓子とかの外部メモリ。