「ご主人、こっちへ!」
「ご主人」と呼びかけた女の子の手をひいて駆け出す。不格好な二つ結びの金髪が左右ばらばらに揺れる。「ご主人」はまだ小さくて、オーバーオールの裾を幾重にも折り上げてある。斜め掛けにしたポシェットはひよこのかたち。
わたしはお人形で。アンドロイドとかレプリカントとかいう類のお人形で、わたしにはご主人がいて。ご主人は金髪の二つ結びの女の子でオーバーオールを着てポシェットを背負っている。ご主人のおとうさんがわたしを造った。
どこかへ消えてしまったおとうさんを探すべく、ご主人とわたしは旅をしてる。
その一場面。
大きな劇場のロビーみたいなところ。壁の三方がガラス張りなので光が入ってとても明るい。
わたしたち、どうやら追いかけられていて、逃げなきゃならないみたい。
「ご主人、こっちへ!」