「ほんとだもん!本当にバグいたんだもん!ウソじゃないもん!」
「うん。お父さんもサツキも、メイがウソつきだなんて思っていないよ」
「メイはきっと、このシステムのレアバグを見つけたんだ。それはとても運がいいことなんだ。でも、いつも会えるとは限らない」
・・・
『今日は、すごいニュースがあるんです。メイが再現が超難しいお化けバグに出会いました。私は、自分も会えたらいいなと思っています』
「お父さん。あしたはバグ、再現できるかなぁ」
「そうだなあ。トトロなら知っているんだろうけどな。おやすみ」
・・・
「こりゃ、ススワタリが出たなぁ」
「ススワタリ?」
「んだ。だぁれもメンテしてねぇ古いコードに湧いて、そこら中、warningだらけにしちゃうのよ」
「それは妖怪ですか?」
「そったら恐ろし気なもんじゃねえよ。ちゃんとメンテしとれば、悪さはしねぇし、いつの間にか、いなくなっちまうんだ」
・・・
「や~い、おまえのリポジトリ、C++98~」
「カンタ!」
・・・
「やあ。すまん、すまん。電車が遅れてね。バスに間に合わなかったんだ。心配したかい?」
「出たの!お父さん、出た出た!」
「クラッシュ!システムクラッシュ!」
「ん?」
「すっごく大きいバグ!」
「「コワーイ!」」
「エヘヘ。会っちゃった。大バグに会っちゃった!」
「コワーイ!」
・・・
「メイ。お母さんのプロジェクトの進捗が悪いんだって。だから今度、帰ってくるの延ばすって」
「ヤダーッ!」
「しかたないじゃない。ムリして大バグ入れたままリリースしたら困るでしょ」
「やだ~っ」
「ねっ。ちょっと延ばすだけだから…」
「やだ~!」
・・・
「メイ!メ~イ!」
「おかしいな。どこさ行っちゃったもんだか」
「さっきメイとケンカしたの。だってメイったら……はっ!」
「あの子、お母さんのプロジェクトの応援に行ったんじゃないかしら!」
「あの炎上中のプロジェクトけ?経験豊富なSEでも3人月はかかるわ」
「あたし見てくる!」
・・・
「メイッ!」
「おねえちゃーん!」
「バカメイ!」
「ごめんなさーい」
「レッドブルをお母さんに届ける気だったの?」
・・・
「お母さん、笑ってるよ。」
「大丈夫みたいだね。」
「さあ、早く元気にならなくっちゃね」
「ああ」
「あれ?だれだろう?」
「どうしたの?」
「今、そこの端末で、サツキとメイが笑ったように見えたの」
「案外そうかもしれないよ。ほら(コミットログを見せる)」
・・・
♪だれかが こっそり
コードに 大バグ うずめて
ちっさな芽 生えたら
秘密の暗号 沼へのデスマーチ
す て き な 冒 険 は じ ま る