盗賊ローガンが給水塔を壊して、水の備蓄が出来なくなってしまうからと、もう一人の『もの作りのエキスパート』であるミアンと協力して直したのが昨日。
素材や部品集めに奔走しただけでなく、必死に建築したものだから、二人ともくたびれてしまった。
ワーカーホリックのミアンも、さすがに今日は家で休むと言っていたから、私も今日はお休みしよう。
そのつもりで、マートル広場にある、サンドロックに来てすぐの頃に、ミアンと一緒に設置したベンチに座って町並みを見ていたのだが、いつの間にか眠っていたらしい。
「・・・?」
足が痺れてちょっと悪夢を見ていた。目を開けると、私の足に何かいる。
「・・・・・・えっ」
頭が混乱している。私の足を枕にしているのは、この町の守り手であるペンだった。背が高いからベンチにごろんと寝られずに足を下へおろしている。それでは明らかに眠れないだろうという格好だが、意外にも、これは寝息だろうか・・・?
いや、ちょっと待て?寝るならここにはベンチはたくさんある。それなのに、何でわざわざ私がうたた寝しているここにくるんだ?
どう、すればいいだろう?このまま寝かせておく方がいいのか、起こして話した方がいいのか・・・
「・・・・・・」
あ。ペンと目が合った・・・
「・・・おはよう?」
「・・・・・・ん・・・」
寝ぼけているのだろうか。いつもみたいに気取ってなくて何だか調子が狂う。そのまま、また寝てしまったみたいだ。えっ、またしばらくこのまま?
「まあ、今日くらいいいか。ペンも今日はサンドロックの守り人、おやすみってことで・・・」
「・・・ん」
私がボソッと言った言葉に、ペンが返事したように聞こえた。足の痺れよりも、何だか温もりが勝ってきて、またしても私は眠りについてしまった。
「ん・・・?」
気がつくと、町の中は夕日が沈もうとしていた。
「起きたのか、細腕っ子」
声が私の顔の上から降ってくる。見上げたら、ペンの顔があった。なに、これ。
「へぁ・・・?」
さっき、私が膝枕をしているような形になっていたはずだ。なぜ今は膝枕されているのだろうか・・・?
「よく寝ていたな。給水塔を直すのに必死に動いていたんだったなあ、細腕っ子」
「へ・・・あ、うん。そうだけど・・・」
え、この体制のまま話をするのか?と疑問に思った時だった。ペンの手が、私の頭を撫でた。何度も何度も。混乱する私の顔を見て、ペンは口の端をあげてニヤッと笑った。
さっき私が膝枕をしてい時と全く違う表情で、どうしていいか解らないどころか、これは・・・
「どうした?顔が真っ赤だぞ?」
解って言っているな、これは・・・!
「・・・・・・夕日が綺麗だからだね、私の顔が赤いのは」
「へえ、そうか。サンドロックは月も綺麗だぞ?ま、星も綺麗だがな」
そう言って、ペンは私の頭を撫でるのを止めた。
「・・・・・・」
「何だ?細腕っ子、もっと撫でて欲しかったか?」
私が言った言葉の意味が解っているのだろうか。絶対に解らないと思っていたのだけど、ニヤニヤして私の顔を覗き込むこの男は、きっと意味を知っているのだ。
「うんって言ったらやってくれるの?」
「・・・自由都市の告白の仕方は、セリフだったとは思ってなかったがな?オレの記憶違いか?」
「明日、買って渡すよ」
「へえ、それは楽しみだな・・・」
そういって、ペンは私の頭をやさしく撫でた。
終わり