○迷子のビルダー

天牙 翔(kaketen)
·
公開:2024/7/29

迷子のビルダー

ビルダーの募集を見て、サンドロックに来てから数日。もらった地図を見ても、目的地にたどり着けないというどうにもならない事案に遭遇した。

確かに私は方向音痴の自覚はある。あるけれど、地図を持っているのにどうしてたどり着けないんだろう?

「ビルダーさん?」

マートル広場で地図をくるくるくるくる回しながら見ていたら、声をかけられた。そっちを見ると小さい女の子が私を見ていた。

「あ、えっと、ジャスミンちゃんだっけ?」

「はい、ジャスミンでいいですよ、ビルダーさん」

「ああ、私の事もビルダーでいいよ、ジャスミン」

二人でお互いの呼び方を言い合って、一緒に笑ってしまった。

「さっきもここに来てましたよね?あ、もしかして迷っていたりして・・・?」

「うっ、そうなんだ・・・」

「昨日、サンドロックツアーをしたけど、それじゃ覚えられなかったですか?」

「うう・・・実はね・・・」

そう、ジャスミンの言う通り、手紙を届けに来てくれた彼女が、町の素晴らしいところを案内してくれたのだけど、全く覚えられなかった。自分の家からすぐの牧場とオアシスはなんとかなるけれど、建物の場所がわからないのだ。ワークショップから右手が商業ギルドだっけ?ブルームーン酒場はマートル広場だっけ?地図をみても全くわからない。昨日は迷って、町の中で力尽きてペンって人に助けられたらしい。手紙が入っていた。

「教会に行くんですね。それならまたわたしが案内してあげます!行きましょう、ビルダー」

ジャスミンがツアーとは違ってゆっくり歩き出した。

「マートル広場からなら、こっちの厩舎の後ろの階段から行く方がわかりやすいと思います」

本当だ、後ろに階段がある。しばらく上ると右側に道がある。私がそっちを見ているのに気がついたのか、ジャスミンが私の手を握った。

「そのまま階段を上まで上りますよー」

「はーい」

手を繋いだまま、一番上まで行くと、右側に大きな建物が見えた。ジャスミンが手を離してそっちに走っていく。

「ビルダー、こっちです」

ジャスミンの呼ぶ方に行くと、そこが教会だった。

「わあ、ありがとうジャスミン!」

「どういたしまして!道がわからないなら、駅からヤクメルバスも出ていますから、それを使ってもいいと思います」

そういえばそんなのもあったな。それなら迷うこともなく教会までは来られるだろう。教会に用事があれば使おう・・・

「そういえば、教会になんの用事だったんですか?」

「えっと、ミゲルさんにお届け物を」

「あれ?さっきウォーターワールドの近くにいましたよ?」

「ウォーターワールド?ってどこ?」

「さっき上ってきた階段のすぐ近く・・・」

「・・・・・・どっちだっけ」

「ええ!?」

おわり

@kaketen
きみのまちサンドロックにお熱。 ノベルスキーにいます。興味あったらこちらをどうぞ novelskey.tarbin.net/@kaketen