○そんなのアリ?

ユフォーラサルベージの近くに自生しているサンドベリーを採って、乾燥ラックで干してドライサンドベリーを作っている。

疲れたときには甘いもの、というのはどこの国でも共通なようで、町の大抵の人は喜んでくれる。毎日採れるものではないけれど、散歩していると意外と見つかるものだ。

今日は、ユフォーラサルベージの近くに見つけたから採っていたのだけれど・・・なぜかその近くにいるバンブルアントにじーっと見つめられている。

頭に蜜の入った壺を乗せたアリで、それを目当てに狩られているちょっと可哀想なモンスターだ。なにもしなければとてもおとなしいので、じーっと見られても放っておけばいいよなとは思ったけれど、ここまで見られると気まずい。モンスターだからこそ気まずい、サンドベリー、欲しいのだろうか。

「・・・」

採ったものを四つ、そこに置いて離れることにした。ワークショップの向こう側にもあったはずだ。そっちで採れば他にモンスターはいなかったはずだし。

自分の家の近くまで来たときに、そっちを振り返ったらモンスターがサンドベリーを取っていた。やっぱり欲しかったのかな。

家の向こうには、石や枯れ木もあるからついでに砕いておこう。硬い石にはたまに大理石も混じっている。最近、依頼で使うからいくらあっても困らない。本当は橋の向こうの砂漠にも行きたいけれど、あっちはギーグラーというトカゲ族がうろうろしているから、橋を渡るのが禁止になっている。もしかして、ギーグラーたちの一掃もビルダーの仕事とか言わないよね・・・?違うよね?

「うーん、民兵団の反応からしたら言いそうだなあ」

サンドロックの民兵団は、二人と一匹しかメンバーがいないから、万年人手不足らしい。たまにそこら辺のモンスター退治なんかは引き受けているけれど、さすがに、ねえ?

そんなことを考えながら石を砕き、枯れ木を切っていたら疲れてきた。どちらもとても硬いから、さすがにいくつもとることはできない。一度ワークショップに帰ろう。

「あれ?」

家の門の前に、なにか置いてある。よく見たら、それは蟻の蜜だった。なんでこんなところに?もしかして、さっきのバンブルアントの恩返し?

「まさかねえ?」

キョロキョロと辺りを見回すも、誰も何もいない。町の人でこんなイタズラのようなことをする人にも・・・まあ、エルシーはしそうだけど、今回のこれをやってなにか楽しいことがあるかといえば、絶対にないだろうし。たぶん、恩返しでいいだろう、たぶん。

「蜜、ありがとうね。ありがたくいただいておくね!」

聞いているのか、いや、そもそもモンスターが人の言葉が解るのかどうかというところだけど、一応サルベージショップの方へ声をかけておいた。

次の朝。家を出たら蟻の蜜が三つ置いてあった。

「蟻の蜜が三つ・・・ふふふふふ」

解ってやってるのか、いや、昨日あげたサンドベリーは四つで、もらったのは一つだった。今日まとめて持ってきたのかもしれない。

それにしても、だ。

「こんなのアリ?って感じ。ふふふ」

終わり

@kaketen
きみのまちサンドロックにお熱。 ノベルスキーにいます。興味あったらこちらをどうぞ novelskey.tarbin.net/@kaketen