ベンチと猫と
マートル広場にあるこのベンチは、サンドロックで活躍するビルダー二人が作ったらしい。
町役場の人の出入りや、広場を通る人を見ることが出来るのだけど、あんまり人来ないんだなあ。
どちらかというと、ねこといぬがうろうろしてる。
兄弟かな?トラもようのねこが二匹と、ちょっと足の短いまるっこいいぬがとことこ歩いたりベンチに座ったりしてる。
平和だなあ。この町は砂漠の中にあるからか、みんなで協力しながらいろんなことをやっているらしい。
多少荒っぽいところはあるものの、まあ、そんな雰囲気もこの町に合っているからいいんじゃないかなあって思っている。
「おや、キャプテン、そんなところで何を?」
キャプテンって誰が?
声のした方を見ると、黄色と橙色を基調とした服を着た短髪の男の人が立っていた。
「ニャア」
えっ、ねこ?その声がした方を見たら、僕と同じベンチに黒いねこが座っていた。かわいい帽子をかぶってる。
「知らない人の横に座るなんて、珍しいですね。もしかしてあなたはネズミだったりしますか?」
ね、ネズミ?真顔でそんなことを言ってくるので、まじまじとその人の顔を見てしまった。
「なにか持ってたり、例えば魔法の鏡とか」
魔法の鏡?なに言ってんだろう、この人?
「ニャア、ニャア」
ねこが僕のカバンをさした。もしかして・・・
カバンを開けて、さっきもらったサンダクーダという魚の乾物を出してあげた。
「ニャーーー」
あっ持っていっちゃった。ここのサンダクーダの乾物は、塩ではなくお醤油で味をつけているから、珍しいなとお土産にするつもりだったんだけど。
まあ、いいか。
「キャプテン、そんなにおなかがすいていたんでしょうか、すみません」
申し訳なさそうに言ってるけど、あんまり表情が変わらない人だなあ。気にしなくていいと伝えると、その人は考えるような仕草をした後、少し待っていて欲しいとどこかへ行ってしまった。
お土産、またなにか買わないとなあと考えていたら、目の前にサンダクーダの乾物が差し出された。
「こちら、どうぞ」
さっきの男の人が乾物を三つも差し出している。
「キャプテンから取り返したわけではありません、大丈夫です。ビルダーに依頼して作ってもらいました」
乾物ってそんなすぐ出来ないよなあ?
心配になって聞いてみたら、ここの駅近くに住むビルダーは、町民の好みを把握しているらしく、いろんな食料や素材を作り置きしているのだそうだ。ビルダーというより、何でも屋さんみたいだ。よくよく聞いたら、この男の人も民兵団の一員で、あのかわいい帽子をかぶっていたねこも、民兵団のねこだそうだ。
ねこが、民兵団の一員・・・人員不足なのかな?
「キャプテンは優秀ですよ」
僕の考えを読んだかのような言葉に苦笑いが出てしまった。意外と鋭いこと言うんだな、このおにいさん。