ギーグラーにモイスチャーファームを襲撃され、此方から先手を打つためにトラムを直した。砂漠の向こうにある駅でもやることがあるからと、ビルダーである私とミアンも行く事になった。二手に分かれて、ミアンとアンスール、私とジャスティス、猫のキャプテンが一緒に乗った。車両につけた手漕ぎのハンドルを漕ぎ出して、順調だったのに。私たちの方のケーブルが切れた。
「げっ・・・」
「強度の確認しておけばよかったか」
「そんなこと言ってる場合か!衝撃に備えておけ!」
私たちが落ちた先は、ギーグラーたちがアジトにしているヤモリ駅だった。見張りが音に気が付いて此方に向かってきたのをジャスティスの援護射撃で乗りきった。
あれ、必然的に前衛は私だな?まあ、いいけど。射撃は苦手だからと言ったら、後衛の練習をするのも民兵団の仕事だからと、予備の銃を渡されてしまった。だから、エイムが定まらないんですってば。
「やってればうまくなるさ、俺が言うんだから間違いはない!」
「・・・・・・貴重な銃をもらったからにはやってみるけど、期待はしないでくださいよ」
「アンスールも初めて銃を撃ったときは衝撃で前歯を何本か折ってたな・・・」
「そんな話聞いてやりたいなんて、尚更思いませんけど!?」
その場で簡単に銃の撃ち方を教わり、なんとか当たるようにはなったが、まだまだ不安が残る。まあ、いいか、ここでは私が前に出ればいいのだから。
あちらこちらに焚き火があって、目印にはなるけれど・・・ギーグラーって寒がりなのだろうか?
焚き火の近くで寝ていたりしているから、気づかれないように動いて不意討ちを喰らわせる戦法が効いている。
ただ、アソシエイトをうまく倒せないと持っている銅鑼で援軍を呼ぶから大変なのだけれど、そうなったら物陰に潜んでいるジャスティスが脳天に一発放ってなんとかなっている。
なっていたけれど、広いところに出たら、体格のいいギーグラーが演説をしているところだった。そいつがリーダーなのか、たくさんのギーグラーに囲まれていた。
わあ、こんな数相手にするのなんて無理だよ、いくらジャスティスのエイムが抜群でも、この銃に込められる玉は六発しかない。全て当てたとしても、他の奴がこっちに近づいてくることになる。
「・・・お前さん、落ち着いてるように見えて、意外と慌ててるな?」
「この状態で慌てない人はいないと思うんですが・・・」
「そんなビルダーに言っておくことがある。ここから出るには、アイツらの前を通っていくことになるぞ」
「・・・・・・・・・」
「とりあえずここはぐるっと回らなければアイツらの前にも行くことは出来ないからな、出てくるギーグラーは退治しながら行くぞ」
「うえええ」
そういえば・・・ミアンたちは何事もなく砂漠の向こうについていたみたいだったけれど、なんで彼らは落ちなかったのか・・・あ。
「ジャスティス、あのさあ」
「ん?」
「ケーブルが切れたのってさ、古くなってたのはもちろんなんだけど。たぶんミアンたちよりこっちの方が重かったからだよね」
「・・・・・・思っても言わなかったのに、お前さんは自分で言うのか・・・」
「だって本当のことじゃないか!ジャスティスとアンスールの体重差のこと、すっぽり抜け落ちてた!ちゃんと考えてたらこんな危ないことしなくてよかったんだよ!?いくら民兵団でもあんなにたくさんのギーグラーなんか相手に出来ないでしょうが!」
「まあ、俺とアンスールは背も違うしな。大体十センチくらい違うんじゃないか?」
「今その情報要らないんだよなあ、気づかなかった私も悪いんだけど」
「次に活かせばいいだろう、まあ、ここを無事に抜け出せたらの話だが・・・」
「あーはいはい・・・!?」
ジャスティスの方をふと見たら、後ろにギーグラーが迫っている!彼をはねのけるのは体格差からして無理だ。一か八か、私は銃を抜いた。
「ジャスティス!」
その声に疑問を持つこと無く、さっと回避行動を行った。私はそれと同時に発砲して、ギーグラーの腹に当てた。さっと武器を短剣に持ち変え、体勢を崩したギーグラーの懐に入り、連続攻撃を加えていく。素早い動きに太刀打ちできないまま、ギーグラーはその場に崩れた。
「はあ、はあ・・・」
「やるじゃないか」
ぽんぽんと私の肩を叩いて、ジャスティスが先へ進んでいく。いや貴方は後衛でしょうが。先に行くんじゃない!
途中にいたギーグラーたちを蹴散らし、とうとうギーグラーのリーダーたちがいる部屋へとやって来た。ジャスティスのドジで気が付かれてしまったものの、どこから来たのかキャプテンが巨大扇風機のスイッチを入れて手下たちを吹っ飛ばしてやっつけてくれた。
「ヒーローはピンチに駆けつけるのがセオリーだもんね・・・さすがキャプテン」
「そんなこと言ってる場合か!ギーグラーのリーダーを倒すぞ!」
「そうだった」
ギーグラーのリーダーは、持っていたバスタードソードに火をつけて、こちらへと切りかかってくる。アイツにはバスタードソードサイズだけど、人間にとっては振り下ろされる衝撃だけでも体勢が崩されるレベルだ。さらには火もついているから迂闊に近づけない!
「ビルダー!悪いがそいつの注意を引き付けておいてくれ!俺が援護する!」
「あああもうやってるでしょー!」
ジャスティスは組まれた足場らしきものに登ってずっと射撃を続けている。私も隙を見て攻撃しているが、腹に当たるばかりでダメージがそこまで無さそうだ・・・
「っ!」
ブォンとリーダーがバスタードソードを私の目の前に振り下ろした。力任せにしているから、地面に刺さったらしい。よし、今なら・・・!短剣の連続攻撃をここぞとばかりに叩き込む。ジャスティスも一ヶ所に集中して当てているようだ。これなら・・・と思った瞬間、ギーグラーはバスタードソードを引き抜き、また振り回して私とジャスティスを吹っ飛ばし、自分達で武装した列車へ飛び乗り発車させた。
そのあとは、よく覚えていない。
私がそのギーグラーを追って列車にのって戦うも疲れきっていて歯が立たず、ジャスティスに助けられたこと、それと同時にギーグラーは列車にとともに谷底へ落ちていったことを後から聞いた。ギーグラーは、橋から部品を盗っていた。その為、橋の強度が落ちて、ギーグラーの重さと列車の重さに耐えられなかったのだ。
ギーグラーの問題は解決したものの、今度は次の問題が・・・橋造りだ。
今度はきっちり強度検査するんだ・・・!
おわり