空の上にあるもの
マチルダがロボットの操作を間違えて、空に打ち出された後、私の元に降ってきたのは不思議なパーツだった。ロボットに関してならチーホン局長だろうと見せに行ったら、いろいろ話してくれたけど、解ったのは「なにかすごい剣のためのパーツ」ということだった。
興奮しながら喋っていたけれど、彼は宇宙船を探していたのだった。
「これで私の仮説が本物だったと証明できる!」
珍しく大きな声で言うものだから、気になったので聞いてみることにした。
「あの空の上に、生きて暮らしている人がいるということ?」
「ああ、元々旧世界の人間たちは我々の生活レベルより高い水準の暮らしをしていたというのは、遺跡などから見つかるものから解ることだが、あの宇宙船の大きさからすれば生活が出来るように作られていると言わざるをえない」
「それじゃあ、マチルダがそういう星や宇宙船に助けられる確率はどれくらいあると思う?」
私の言葉に、チーホンは腕組をして視線を左右に動かし、相当頭を働かせているような仕草をし始めた。
「うーん・・・そうだなまずは・・・」
あ、私には解らない話になってしまった。一応相槌はうっておくけれど、うーん、どの辺でやめてもらおうかなあ。
「というわけだ、理解したか?」
「あ!?ああ、うん大体」
「そうか、ならいい。このパーツは一度預からせてくれ。ついでにその剣も。使えるようにどうにかしよう」
パーツと剣について話している時、研究者というよりも、なんというか別の面が見えるのは気のせいじゃないよなあ。そういうところを前面に出したら少しくらいは親しみを持たれるんじゃないかなと私個人は思うのだけど。
うーん、こんなことを考えるとは、私もサンドロックに染まったな。
「経過は手紙で知らせる、ではな」
「解った、じゃあね、局長」
マチルダがもしかしたら、命尽きる前に何処かの星に辿り着いたり、宇宙空間をを彷徨う宇宙船に拾われる可能性は低いかもしれない。でも、ゼロではないのだ。あの人のカリスマ性は目の当たりにしているから、そこで軍隊を作ってしまうかもしれない。
私の生きている時代に戻るなら、それは絶対に阻止する。自分のいない時代に、あの人の思想をもつものが現れた時にどうしたらいいか・・・そうだ、ミアンと作ったタイムカプセルをいくつも作って、なにがあったかを書いて入れておこう。それをサンドロックのあちこちに埋めておけば、将来の助けになるだろう。
「よし、さっそく」
自分のワークショップに戻って、タイムカプセルを作ろう。中に入れるものは、私の手紙と、この事件に関するタンブルウィードスタンダード。それと今のこのサンドロックの景色の写真をいれよう。美しい町が、タイムカプセルを開けたときもそのままであるように願いを込めて。
おわり