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パラダイスロストに入ると、以前よりひっそりとしていた。あのときは二人でこの中にいるほぼ全てのロボットを壊したからだろうか。その時に、また来るかもしれないからと奥まですぐに行けるルートを確保していたなと思い出し、そこを通っていく。ロボットたちが待ち構えているかと思ったが、やはりここに残っていたロボットは倒しきったのだろうか?全く出てこないまま一番奥の部屋まで辿り着いた。
丸いドーム型の部屋。その中央にペンが作ったソファーが鎮座していた。
「・・・・・・」
見れば見るほど不思議なソファーだ。ペン曰く玉座だと言っていたが、その場にあるものを使った割に、座り心地はかなりいい。座り心地は良いが、背もたれのスイーパーの目のような部分をなんで使ったかなとは思うのだけど。それもペンのセンスなのだろう。
「一緒に座ったけど、結局あのときだけだったね」
あのときの事は、昨日の事のように思い出せる。クッションを二つつけたってことは、何もなければまたここに来て、一緒に座って、思い出も語れたのだろうか。
いや、あのときよりもっと前、むしろ初めから、ペンはデュボスの騎士だったんだ。考えないようにしていた事にとうとう辿り着いてしまった。
涙なんてとっくに枯れたと思っていたけれど、悲しいとやはり出るものなのだ。ここには誰もいないから、思う存分泣くことにしよう。
泣き疲れて眠るのは何度目だろう。もう数えるのも馬鹿らしいが・・・
パラダイスロストは地下に降りていくところだから、今が何時なのか、何日なのか全くわからない。お腹もあまり減らなくなってしまったから、私の腹時計は故障中だ。日にちと時間を知るにはここをでなければ。行きと同じ道を通って、地上へ出た。
外はもう明るい。明るいけれど、何日経ってるのだろう。それが問題だ。
「よお、おかえり、ビルダー」
「は?なんでここに?」
そこにいたのは、ローガンだった。狭い足場でキャンプしていたような跡がある。まさかずっと待っていたのだろうか?
「あー・・・」
「ずっと待ってたんだね。なんでそこまでして・・・私はただのビルダーだよ。ただ少し、厄介ごとに巻き込まれる質のビルダーだ・・・ローガンやジャスティスとか、町に必要な人たちに守ってもらえるようなすごい人じゃ無いよ・・・」
「あんたはそう言うけどな、オレはあんたに助けられてる。ジャスティスも二人と一匹しか居なかった民兵団に来た頼りになる奴だと言っていた。町の奴らだってそうだ。あんたともう一人のビルダーがいなければ、この町はとっくに終わっていたんだよ。もちろん、終わってしまう前にデュボスがこのサンドロックを支配していたはずだ」
「そんなの・・・!」
「いいから聞け。町の終わりを引き延ばしたのは、他でもないあんたなんだよ。やろうと思えば、そう、お前さんが戦闘経験を積む前に、奴らがデュボスと連絡を取り合って、お前さんを騙して遺跡からなんでもかんでも引き上げられたはずだ。それをすぐにしなかったのは、ペンがあんたを気に入ったからだよ。いろんな事を教わっていたと、ジャスティスとオーウェンから聞いている。正に師匠と弟子のようだったってな」
「師匠と弟子・・・そう見えていたんだ」
「ああ。経験を積んだからこそ、この町は守れたが・・・あんたにはつらい結果になってしまったけどな」
つらい結果。そうかもしれない。でも、ペンと過ごした時間は、とても楽しかった。何と言われようと、楽しかったのだ。
「ハルが捕まって、ペンが正体を明かしたとき、私が何て言ったか覚えてる?あんたの尻を蹴ってやる!って言ったんだよ。あの後さ、宇宙船でジャスティスとローガンがさ、偶然だと思うけどうまくやって、最終的にペンの尻を蹴って吹っ飛ばせたんだよね。あれには自然と笑っちゃったよ」
「そんなこともあったな・・・」
つらいことだけど、私の中では、もう『いい思い出』になりつつある。やけくそで話している訳じゃない。私から話せば、思い出を分かち合ってくれる仲間がいる。だから大丈夫。
「そうだ、ローガン。今って何日なんだろう?体内時計が狂ってて解らないんだ」
「・・・・・・明日がペンの連行の日だ」
「明日・・・」
続く