町に戻ると、特になにも変わることはなく、いつも通りだった。それはその通りだ、変わったのは私だけだ。
民兵団の二人が広場にいたので、帰ってきたと報告はした。二人とも無事でよかったと言ってくれた。ジャスティスがローガンは家にいると教えてくれたから、報告に言ってみることにした。地図も返さないといけないし。
ローガンの家に入ると、彼は入口すぐそばののソファーに座っていた。
「ああ、帰ってきたのか」
「うん、地図ありがとう、返すよ」
「・・・怪我しているじゃないか」
借りた地図を渡したら、怪我を見られてしまった。腕輪を見てからなにも手につかなくなって、処置をするのを忘れていた。
「あー、うん、少し無茶をしたから、でも大丈夫だよ」
「・・・待ってろ、手当てする」
そう言って、ローガンは二階の自室に入って行ってしまった。思い出したら痛くなってきたから、お言葉に甘えることにした。
ふと見たソファーの近くのテーブルに、かなりゴミがたまっている。片付けてないのかな?
そういえば、ローガンの家って、大抵の家にあるはずのリビングがないんだ。彼の父親の職業からしたら、一家団欒というイメージはないけれど。まあ、このソファーのあるところがリビングだと言われたら、そうなのかもしれないけれど。
「袖、捲れるか?」
・・・・・・家中の薬を集めてきたのだろうかというくらいに薬を抱えて出てきたな。全く慌てていないように見えたけど、これはかなり動揺しているのだろうか?階段降りられるかな。
「あー、えー・・・うん」
「なら、そこのソファーに座ってくれ」
さっきまでローガンが座っていた場所を指して、彼は階段を降りてきた。無事に降りられて何より。
腕を捲って傷口を見せたら、ローガンの顔が歪んだ。
「これは随分と深く噛まれたな・・・」
手当てをしてもらいながら、何があったか説明した。ローガンなら誰かに話すこともないだろうから。
「それだけの数をそんな狭いところで対処したとはな。そりゃこんな無茶もするだろうな」
そう言いながら、怪我した箇所をぽんぽんと叩いた。包帯も巻いてくれたが、かなり痛い。
「いっ・・・!なんでそういうことするかな!」
「はは、もうこんな無茶するなよ、あまり痛みが続くようなら、診療所に行ってドクターに見てもらった方がいい」
「そうする。ありがとう、ローガン」
「ああ、わざわざ地図を返しに来てくれてありがとう、お大事にな」
そのままローガンの家をでて、自分のワークショップに戻る道すがら、考える。怪我をした左腕に、ペンにもらった腕輪をしていたのだから、きっと気がついたはずだ。それでも何も言わないのは、彼なりの優しさなのだろう。どう聞けばいいか解らなかったのかもしれないけれど。
でも、聞かないでくれるのは、私にとってはありがたいことだ。これがペンからの贈り物だと知られたら、なにがあるか解らないから外せという人が多いだろうから。
きっとこれから、私が服を着替えても、この腕輪だけはずっとを付け続けている事に気がつく住民がでてくるだろう。それでも、なにも聞かないでほしい。これは、私が翼を失っても、地上で生きていくための大切な守り手なのだ。
蛇足終わり