リサイクラーにくずを投入して、完了するまで一時間くらい。その間に近くにあるサボテンにキックしてトゲを集めようと外に出た。
「おりゃあ!」
何度か蹴ると、トゲとサボテンの実が落ちてくる。結構この実も美味しいので一石二鳥だ。
「とうっ!」
ただ、サボテンの花だけはどうしても落ちてくれないから、切るしか手に入れる方法がないのがね・・・町から遠ければいいのかな?後でバージェスさんに聞きに行こうかななんて考え事をしながら蹴っていたのがいけなかった。
「いッッ!」
サボテンのトゲが足に刺さった。
靴底を突き破る程の固さ・・・はやく抜いてしまいたいのだけど、痛いし片足立ちだしでなかなか抜けない。いたいっいたいっ
「うりゃっ」
やっと抜けた。安心して息を吐いて視線をあげたら、庭にある遺物の置き物を見に来たらしいヤンと目があってしまった。
「・・・・・・」
「何をやってるんだ、ビルダー」
うっ、ヤンに見られるなんてついてないな・・・この人、腕は確かなのに仕事をしているようには見えない。それなのに年間アワードでは一位を取って、しかもギルドのリーダーをしているという、なんだか不思議な人だ。
「サボテンのトゲは固いから、木を蹴るときは気を付けろと言わなかったか?そうか、聞いてなかったんだな?仕方ない、もう一度言ってやろうか?」
「いや、大丈夫です・・・」
「全く、お前はうちのギルドの稼ぎ頭だ、トゲで効率が落ちるのは困るからな、これを使っておけ」
そう言って、ヤンがこちらにポイッとなにかを投げて寄越した。
「金は・・・まあ、いい、次から気を付けるんだな!」
そのまま遺物を見ることなく、ギルドの方へ戻っていった。投げて寄越したものを見ると、止血剤だった。え、ケチで有名なヤンが、こんなもの寄越すって・・・明日は雨でも降るのかな・・・?
いや、まあ、くれたのだから、ありがたくもらっておこう。
もらった薬をつけるため、庭に戻って椅子を出した。刺さった足を見てみたら、少しだけ血が出ていたので、早速つける。うううしみる・・・
「うぐぐ」
歩くのに支障はないけれど、今日はもう家で過ごしておこう・・・
次の日。
商業ギルドへコミッションを受けに行こうとお邪魔したら、そこにヤンとミアンがいた。
なにやら揉めているみたいだ。うーん、なんでヤンはこんなにミアンへ突っ掛かるんだろうか。優秀なのが気にくわないのか、言うことを聞かないからか、私にはよく解らない。
私には気がついていないようなので、コミッションを受けてから声をかけることにした。
「ヤンさん!昨日は止血剤ありがとうございました!」
「えっ、ビルダー?」
「あ!?」
「おかげで直りましたよ!それじゃ!」
そのままギルドを出て自宅に戻る途中から、笑いが込み上げてきてダメだった。
ありがとうって言ったときのあのヤンの顔!それをミアンに見られた時の顔!百面相だったなあ。
後でミアンになにがあったか聞かれそうだけど、ヤンが誰かに優しくした話なんて聞いたこと無いだろうから、話しちゃおう。 明日には町中に広がって、話題になったらいいよね。あのヤンが!ってね。
おわり