ペンのことを面白い人だなあと思って、なんだかんだいろんな話をしていたら、いつの間にかお付き合いすることになった。一緒にいれば、笑っているから嫌いではない。付き合ったきっかけは、成り行きと言ってしまえば簡単だけど。ハートの結び目を渡したら、パラダイス・ロストに行ったなあ・・・
ああ、現実逃避してしまった。なんで今こんなことを思い出しているかっていうと・・・
ペンにトレーニングを見ていかないか声をかけられて、ホイホイと着いていったのが悪かったのだ。背中に乗らされて、腕立て伏せの重りになっているのだ。優雅にって言うから、ずっとポーズをしたままもう一時間くらいになる。しかも、ペンは鏡に向かって腕立て伏せしているから、確実に私が見えている状態だ。ポーズを崩すと
「細腕っ子、お前の優雅ってのはそういうものなのか?」
とすぐにツッコミが入る。
腕立て伏せに集中してください・・・と思ったけど、ちょっと遊んでしまおうか。鏡を見なくなったタイミングで、さっとポーズをかえる。
「・・・・・・ビルダー?なんだそれは・・・」
「・・・遺跡で見つけたオズダックのおどり像のポーズ」
「そうじゃない、オレは優雅にポーズをしていろと言ったんだが?」
「うー・・・わかったよ・・・」
ポーズの指摘をする間も、鏡の私を見るだけだ。言い方はアレだけど、怒っているわけではなさそうなので、次もやってやろう。こうなったら持久戦だ。
しかし・・・サンドロックの守り人と自称しているだけかと思っていたけれど、ペンの体型は、伊達じゃないのだと感心する。ペンに「細腕っ子」と呼ばれてはいるけれど、私も人並みに体重はあるわけで。そんな私を乗せたまま一時間以上腕立て伏せを続けているのだ。サンドロックだけでなく、マチルダ司祭も守るためとはいえ、随分な鍛えようだな・・・。
あ、鏡から視線をそらした。今だ!
「・・・・・・」
鏡の中の私を見たペンの眉がつり上がったが、気にせずそのままポーズをとり続ける。
「オズダックの太陽崇拝像のポーズ」
「はあ・・・優雅なポーズをしてくれ、細腕っ子」
「わかったよ・・・」
ただただペンの重しになっていることに、いい加減私は飽きてきてしまった。優雅だろうと思われるポーズをして、会話もないのだ。遊びたくなるのも仕方ないだろう!今だ!
「細腕・・・「オズダックのステップダンスの像のポーズ!」」
いわれる前に答えた。
「私が背中の上で動いてるのに、何も言わないから楽しくなっちゃった、ごめん」
「ふ、ははは、細腕っ子!お前がそんなにユーモアのある奴だとは思わなかった!」
そう言って、ペンが腕立て伏せの状態から突然立ち上がったから、私はバランスを崩して倒れそうになったけれど、腕を捕まれて彼の胸の中に飛び込んでしまった。そのままギュッと抱き締められてしまった。
「ちょ、っと、わあ」
「細腕っ子」
「ん?なに」
「・・・・・・」
「呼んでおいて黙るのはナシでしょ・・・」
仕方ないから、私からもペンの事を力強く抱き締めておいた。このまま、ペンとこの町で暮らしていければいいなと心から思った。
終わり