何か書きたい。

kakuhiro
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何か書きたいと思った。でも何を書けばいいのかわからなかった。

ここへきてから1か月経った。白い壁、ワックスで少し滑る白い床。狭いと感じていたこの部屋も、住んでみたら快適に感じてきた。

他人だった二人、一つ屋根の下で暮らすこととなった。妻は音楽家で、自分の音楽と向き合う日々だ。防音室にある自分のギターは、少しホコリをかぶっていて、弦も古い。キーボードは新しい家には持ってこなかった。

音楽が自分の表現手段だと思っていた。ただ何も成し遂げることはできなかった。自分自身の事をわかっていないのだと思う。そのまま随分長い年月が経ってしまった。時間を無駄にしたのか、必要な事だったのかもわからない。

1週間ほど前、久々に書店に寄った。手にしたのは北方謙三の本だった。読み始めたら、その世界に引き込まれた。文体、単語、以前とは違う味わいがあった。物語半ばになると、自ら文章が書きたくなった。

何を書けばいいのかわからない、ということをまず書こうと思った。書くことで体の中から何かが軽くなっていく。書き始めたら書きたい事が出てくるのかもしれない。この気持ちが、何か新しいことに繋がるといいなと思う。