3/13 モラトリアムマジックアワー

kamaemo
·

引越しもひと段落つき、新居でゆっくりとして時間が取れるようになった。親戚に晩御飯をたかり、家に帰って風呂に入ればもう用事はない。時計を見るとまだ8時過ぎだ。することもないのでパソコンを立ち上げてシナリオを書いたり、早速買ってきた本を読んだらしてみる。お湯を沸かし、新調したティーサーバー(透明の急須みたいなやつ。調べたところこんなオシャレな名前がついていたらしい)で日本茶を淹れる。新調したマグカップに茶を注ぐ。猫舌なのでゆっくりと飲み進める。シナリオを書きつつ、飽きたら本を読む。ふと気がつくとティーサーバーのお茶はすっかり冷めている。時計を見るとまだ9時半。茶を飲み干し、もう一度お湯を沸かす……。こんなことを3回ほど繰り返し、すっかりお茶を飲み過ぎたワイトは腹を水風船のようにちゃぽちゃぽ言わせながら布団に入る。寝ようにもお茶を飲み過ぎたせいか全く眠気が訪れない。新居でも相変わらずのバカを晒して生きている。

こうして緩慢に過ごす日々の中、マジックアワーのようだと感じる。日没や日の出前の空に藍色と橙色が混ざり合う時間帯。24時間のうちたった数十分に満たない短い、けれど美しい時間。今のワイトは学生でも社会人でもない。東京のサボテンでも地方のサボテンでもない。やるべきこともなく、藍にも橙にも染まれずに宙を惑う日々。ただ茶を淹れて、のんびりと趣味に打ち込むだけの毎日。就職したらこうはいかないのだろう。恐らく人生で最後の春休みだ。あと二週間ちょっとの最後の自由。命短いものに対して美しさを見出す日本特有の感性が存分に発揮されているらしい。こんな毎日がやたらと楽しく、美しく感じてしまう。だからこそ、こんな日々が永遠に続いてほしいとも、さっさと終わってしまえと思うのも決して矛盾してはしない。マジックアワーの色彩のごとく、この時間を記憶の中にしっかりと刻み込めばいい。そうすれば空模様が変わってもきっと寂しくないだろう。ところで一つ疑問がある。このマジックアワーが終わった時、訪れるのは夜だろうか、朝だろうか。ワイトの空はどこへ向かって進んでいるのだろうか。願わくば、身体を温める眩い日の出を。

@kamaemo
昨日日記