コンパ等、男女の出会いの場でされる定番の質問に、「どんな異性がタイプ?」というものがあると思う。結婚してアラサーになっても、私は未だにこの問いに対する正しい返し方がわからない。
もし気になる人からこの質問をされたら、そのまま正直に答えてはいけないのだろうなというのはなんとなく分かる。例えば、城田優や真剣佑みたいな誰しもが認めざる得ないレベルのイケメンを挙げたら、「自分は対象外かな……?」と思われて引かれてしまうだろうし、仮に私の二次元のタイプである、「細身で童顔だけど、どことなく老成している影をまとった美少年です。」などと答えようなら、あなたの思想までは聞いてないと思われてしまう。かと言って、「好きになった人がタイプです。」というのも、質問した人を少し突き放してしまうのではと勝手に深読みして、自分的なベスト解ではない気がする。おそらく、気になってる人と似てる人を挙げるのが最適解なのだろうが、そもそもわたしは芸能人をたくさんは知らないので、この質問に対しての最適な答えを導くことがほぼできない。
人生で一度だけ、合コンに行ったことがある。社会人なりたての頃、ひょんなことからラインを交換した1歳年上の女性に、「仕事帰り飲みに行こう」と誘われ、サシ飲みだと思って行ったら合コンだったことがある。その合コンで、「女性はロールキャベツ系男子(草食に擬態した肉食系男子)が好きなのか?」という話題を振られ、「私は見た目から中身まで、どこまで掘っても首尾一貫している金太郎飴のような性格が好きだ。」と言ったら、合コンが一次会の2時間のみで終了した。その日のことをだいぶ後になって、ひと世代年上の友達に話したら、「かまたまちゃん、合コンは落語じゃないんだから一席興じたらだめなのよ。」と言われて衝撃を受け、同時に自分の至らなさを反省した。「合コンでは、最近オープンしたおしゃれカフェや、動物園の赤ちゃんの話とか、みんなが好きなものの話をするのよ?」と言われ、私は婚活中、昼休みにお昼の情報番組を欠かさず見るようにしていたが、今の旦那に出会ってからその情報番組の知識が生かされることはほぼなかった。
私の夫は、令和を生きているのにあいみょんも知らなければ、少し前に流行った「きゅんポーズ」を知らず、一人だけチェケラッチョで写真に写っていた。ちなみにAdoちゃんは、水森亜土のことだと思っていた。本当に平成生まれなのだろうか、年齢を干支一回り以上誤魔化してるのでは無かろうかと、私は未だ少し疑っている。
そんな浮世離れしている旦那は、私と出会う前街コンに参加し、「好きなタイプは?」と聞かれ、自分が知りうる美人を頭から絞り出した結果、「仲間由紀恵と綾瀬はるか」と答えたら場が凍りついたそうだ。当たり前である。あんな絶世の美女に似た人なんて、丸一日梅田を歩いててもお目にかからない。しかも、旦那のタイプは清楚な美女でないことも私は知っている。旦那は元気溌溂で、健康的な面白い子が好きだ。ウマ娘だとヒシアマゾン、プリキュアだとキュアマリン、ちいかわだとうさぎあたりである。手塚治虫が言うところの、「鉄火肌の面白い子」がタイプなのである。
おそらく旦那の中で私は「鉄火肌の面白い子」扱いだと思うのだが、時折気持ちが駄々下がりそうな時に「私は、仲間由紀恵で綾瀬はるか。」と図々しくも自分に言い聞かせることで、てこの原理如く自己肯定感を持ち上げているのである。
自分を仲間由紀恵だと思っている鉄火肌の女と、老成した見た目で浮世離れした中身がどこまでも首尾一貫している細身の金太郎飴系男子。それがかまたま夫妻である。