帆布のかばん

神丘 風│短歌
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公開:2024/4/13

帆布という素材がすきだ。手ざわりとか、生地の号数によっては芯も張らないのに自立する強さとか。どんな形のかばんに仕立てても様になる。色のバリエーションが豊富、革との相性もいい。仕事の相棒としても充分活躍できる。似合う四字熟語は断トツで「質実剛健」だと思う。

とにかく帆布がすきだ。とはいえ出自が明確に保証された国産の帆布製品はおいそれと手を出せる価格ではないので、お店で手に取ることはあってもたいていの場合は泣く泣く棚に戻してきた。今日出かけた先にも国産帆布製品が並んだお店があり、うっかり吸い込まれはしたもののその時点では買うつもりがなかった。

が、今このワンショルダーバッグが私のものとして家にある。革のなめしから製作まですべての工程を国内で手掛けるKissora、山形は米沢に工房を構える日乃本帆布のコラボレーションで生み出されたものだ。

Kissoraと日乃本帆布のコラボ製品。ワンショルダー型のボディバッグは黒の帆布でできていて、金具はゴールド、とくに力のかかりやすい箇所には彩度の低いネイビーのロロマレザーが使用されている。かっこいい。
私が上記を着用した後ろ姿。

かっこいい。無骨すぎずカジュアルすぎず、帆布の質実剛健な性質を活かしたシンプルで無駄のない、利便性の高い作り。ロロマレザーがネイビーなのがまたさりげないアクセントとして効いている。一目みてわかるほど丁寧な縫製にもほれぼれする。ファスナーは黒ならなおよかったなと思うけれど、帰宅してからしばらく眺めているうちにいいところが見つかりすぎてあまり気にならなくなってきた。

お店に入りたがったのは私だったが、最初に購入を決めたのは実はパートナーだ。染色していないナチュラルな風合いの帆布に惹かれている様子だったので、「試しにどれか背負ってみたら」とか「きみにはそのお金で大いにいい思いをする権利がある」とか唆した結果がこちら。

上記色違い。パートナー着用。帆布は染色なしのナチュラルなオフホワイト、ロロマレザーも同様に素材の色を活かしたベージュに近い色合い。

似合う色がここまで反対なのも面白い。パートナーは自分のぶんだけ買えばよかったものを、「せっかくだからお揃いで」と私のぶんまで買ってくれた。たしかにパートナーには最近ちょっとした臨時収入があったのだけれど、それにしたって気前がよすぎる。今後は軽率に唆すのはやめよう……。

帆布のなかでも6号という分厚い布でつくられているので、ちょっとやそっとで壊れたり破れたりすることはないだろう。ヘビーユースしても手入れさえ怠らなければ軽く10年はもつはずだ。布や革の経年変化を楽しみながら大事に使っていきたい。

@kamiokafu
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