この前あるクリエイターの話を聞く機会があった。その方はブランディングや広告クリエイティブの制作に長年携わっていて、わたしも知っていて、たくさんの賞を取っている作品がいくつも手掛けていた。
そのクリエイター曰く、「アイデアは出そうと思って出るものではない」ということだった。面白いアイデアを出そうと思って、ゼロから生み出せる人は多くない。その才を持たない私たちはどうするか。
そのクリエイターは「自分の心に響いた瞬間を覚えておく」と話していた。息を呑むような山頂からの風景、車窓を流れていく景色、夜にさまざまな色が漏れ出す集合住宅の窓、一生懸命に戦うスポーツ選手、それを応援するサポーターたち。自分には関係ないのに、なぜだか見るだけで込み上げてくるものがあるシーン。それを覚えておいて、仕事につなげて活かすのだという。
とはいえ自分は手練れの広告クリエイターではないので、そんなシーンを蓄積しても上手く使えないかもしれない、使う場面はないかもしれない。それでも、それを意識して生きていくだけでも、自分の人生が豊かになる気がするし、まだまだ謎の多い自分のことを理解するのに役立つかもしれない。
自分がここに何かを残す意味、文章を書く意味を見いだせていなかったけど、「心に響いた瞬間を残す」というのをひとつの軸として、何かを書いていけたらと思う。