私たちは優しい地獄で生きている。何か特別なわけでも劇的なわけでもない。等しく辛くて厳しい世界。そこで泣きながら、人によっては涙をこらえながら、踏ん張りながら生きている。
星野源の『地獄でなぜ悪い』を聴くと、私の生きている世界の地獄を描いていて、うれしい気持ちになる。そして辛くて泣きたくなる。
大事な人がいても、いなくても、辛いんだ。世界は。声をかけてくれる人がいても、いなくても、苦しんだ。世界は。
「ここは元から楽しい地獄だ 生まれ落ちた時から出口はないんだ」「嘘でなにが悪いか 目の前を染めて広がる ただ地獄を進む者が悲しい記憶に勝つ」「教室 群れをはぐれた 重い空を行く 生まれ落ちた時から居場所などないさ」「動けない場所から君を 同じ地獄で待つ」
書き出したらこんなにも重苦しいものを星野源は柔らかく歌う。あの声で歌われると、生きている世界が地獄であること、それが当然だと思えてほっとする。私たちは現実という地獄の中で幸せを求めて彷徨い苦しんでいる。
コロナの時に作ってくれた『うちで踊ろう』を聴いた時も、星野源の生きることの捉え方に共感した。
「うちで踊ろう」「生きて踊ろう 僕らそれぞれの場所で重なり合うよ」
一緒に踊っていても、それぞれの場所があって、その時が来たら重なり合うことができる。生きる者の孤独なんだ。
どんなに楽しく歌い踊っていても、この世界は地獄で、1人であろうと2人であろうとずっと孤独。「孤独感なんて当たり前のことだよ」って言われているようで安心する。
私はきっと星野源の歌う曲がずっと好きだと思う。こんなにも痛くて苦しいことを優しく言ってくれる人はいない。
今日も地獄で孤独と闘いながら生きていこうね。