深夜の大塚の公園のトイレで時間を潰しながら色々と考えた。これまでの人生のこと。自分の人生に発生した不幸な出来事。自分が招いたことではなく、起きてしまった数々のこと。
例えば両親が経営していた会社の倒産、両親の離婚、友人の自殺、愛犬の突然死、祖父の急死。これ以外にもいっぱいあるけど、自分ではどうすることもできなかったありとあらゆること。
まるであらかじめ設定されていたかのような出来事を思い出す度に、自分の罪は何だったのかと思う。私は特定の宗教を信仰してはいないけれど、人生は何かしらの罪を償うためにスタートしているのでは?と思うことがしばしばある。子供の頃から辛い思いをたくさんしてきた。いじめもそう。でもいじめは自分が招いたことでもある気がするから、ここには含めなかった。
普通の状態で幸せに生きてこれたのなら、病むことはなかったのかな。でもそんなことを考えてもしょうがないから、与えられた世界で自分の身の振り方、生き方を考えなければいけない。でも、思う。私の罪があったのだとしたら、それはいつ許されるのかって。もう誰かを突然失ったりするのは嫌だ。行いは良いほうではないかもしれないけれど、犯罪はしないし、できる限り人に優しくいるよう心掛けるから、許されたいと思う。
苦労は買ってでもしろと言う。たしかに苦労をすればするだけ、見える世界は違う。それこそ世界の解像度は上がるかもしれない。でも、私は子供に苦労をしてほしいとは思わない。何も知らない無菌室で、それが幸せなのかもわからない状態で無邪気に笑っていてほしい。例えば戦争がわからなくて平和ボケしてるって言われるくらい、戦争が何かもわからないほどに遠い世界の出来事であってほしい。私は子供に対してそう思う。知らなくていい苦労なんて、しなくていいし、自分がした辛いことを経験する必要なんてない。
この考えが根底にあるから、自分の幸せに気づかないで笑っている太陽の下だけをただ歩いて来たような人に惹かれる。見ていて微笑ましくて、羨ましくて、憧れる。あなたは十分すぎるほどの愛を受けて、誰かから大事に大事に守られてきたんだねって思う。それに気づかずに笑っている姿を見ると、尊くて愛おしくなる。そんな幸せなことないから、私もその空気に触れたくなる。子供の時に傷つけられてこなかった人は、とても眩しい。でも、そういう人は自分にはあまりに眩しすぎて、傷つく自分もいる。プラスの意味の羨ましさが、マイナスへと転換され、自分が惨めな気持ちになったりする。この感情はあまりにも醜くて、自分が嫌になることもある。それでもそういう人に強く惹かれてしまう。罪を持たずに生まれただろうあなたを好きになってしまう。
生きる苦しさの根底はこれだ。どうしたら辛くなくなるんだろう。どれだけ前向きに考えても、過去は自分を襲ってくる。完全にPTSDなんだけど、この内容で治療をお願いしたことはない、そういえば。躁鬱も人格障害もあって手一杯なんだよ。カウンセリングだって既にしてるし。過去のことって乗り越えられるのかな。私にはわからない。定期的に過去に飲み込まれる。それはまるで泥のかたまりのようで、私ごと汚泥にまみれて、真っ黒。醜くて、辛い。真っ白になりたい。自分の幸せに気づかないで、笑いたかった。
根本から精神が病んでるから、病んでない自分なんてわからない。11歳からずっとそう。それでも腐りたくはない。時折注がれる光を信じて、環境や自分に負けないで出来る限りのことをしたい。そう思う。だけど、やっぱりこの人生はちょっと辛くて負けそうな時がある。だから異性に対して抱きしめてほしいって思っちゃうんだろうな。弱いよね。そういう自分も嫌いだ。本当は自分のことなんて大嫌いだけど、そんな気持ちで30年生き続けたら自分が傷つきすぎてしまったから、少しずつ自分のことを許してあげようと思ったんだ。じゃないともう生きていけるわけがなかったから。
そんなことを考えていたら、ああやっぱり根本的に勉強をしないといけないんだなと思った。自分の根っこにあるコンプレックスや心残りのあるものを、乗り越えずにここからの先の人生を生きていくことは難しいと思った。前から思ってたけど、何を勉強したい?とずっと考えた。それが明確になったから一つ、人生の目標が決まった。これから私はとてつもなく頑張るから、経済的に安定させて、大学に通い直したい。知りたいことがある。鬱に対処できなくて、大学に思うように通うことができなかったからリベンジしたい。あの頃よりも何を勉強したいかが明確にある。それに今ならレポートなんて幾らでも書ける。知識や学びは誰にも奪われないから、自分の中にたくさん取り込んで少しでも安心できるようになりたい。
塵みたいな経緯で大塚のトイレに辿り着いたけど、この考えまで導き出せたから結果オーライということにしようと思う。したくないけど、する。そうやって自分を許す。それでいいでしょう。馬鹿な自分を呪ってもこの身体は既に穴だらけなんだから。