春が好きだ。暗闇みたいな冬から目を覚まして、木々や花々が芽吹くのと同じように私も活動を始める。やっと動くことができるようになる。4月は新しい人生が始まるかのようなワクワク感がある。暖かくてうれしい。だが、そんなことを感じられるのは一瞬で、春は瞬く間に夏へと移行する。
日本の首都圏の夏は、もはや人が住むのに適した暑さではない。暑さに弱い私は、外を15分歩くだけで熱中症になる。くらくら、ちかちか、ぐるぐる。一度熱中症になると37.5分ほどの微熱がおさまらない。
私はずっと、ずっと、「夏が大嫌い」と言って生きてきた。だが、今は夏は嫌いではない。もうこの言葉を口にすることはないだろう。冬季の鬱のパワーがあまりにも強すぎて、冬以外ならなんでもマシになってしまった。なんなら夏は躁のモードが強くなるから楽しさすらある。自分が元気なことがうれしい。
ただ上記の理由で全力で楽しむことができない。楽しみたい気持ちはいっぱいあるのに、体を壊すから、自制。指をくわえてるような気分。邦ロックが好きだから夏のフェスが羨ましくてしょうがないが、あの灼熱地獄に耐えられるはずがないことはわかりきっている。
いつだったかマッチングアプリで会った男の子とLINEをしていた時に、「毎年熱中症になっちゃうんだよね」と私が送ると、「学習しないんですか(笑)」と返ってきたことがある。私はその子のことを“あ、殺そう”と思った。実際にはそんなことはしないが、相当腹がたったことを覚えてる。体が丈夫な人間とそうでない人間では見えてる世界が違う。こちらだって馬鹿じゃない。対策をしても、無理な時は無理なのだ。
体であれ精神であれ、自分が苦しい思いをしないと人の気持ちがわからない人間がいる。見えない世界で幸せに生きてる人間は、私よりずっと幸せかもしれない。だが、私はそういう人間にはなりたくない。
去年同様、今年の夏も引きこもりかな……いや、ちょっとは遊びたい。てか好きな人と花火、見たくない?