20代までは努力すれば人の気持ちがわかるような気がしていた。
前の職場の男性の上司がことあるごとに「人の気持ちなんてわからないよ。わかると思ってるの?」と言っていて、何て冷たい人なんだろうと思っていた。
けれど、その人は自分とはほとんど関わりのないような人が病んでる時に、精神科に同行してあげていた。私が潰れそうな時に何度も状況の確認をして、さり気なく励ましてくれた。その人と仲良くなるなかで、「人の気持ちがわからない」ということについて深く考えてみたいと思った。
この言葉の本当の意味は、他者を否定するところにない。前提として、人の気持ちなんてわかるわけがないからこそ、理解する努力をしなければいけないということだ。初対面はぶっきらぼうで冷たい印象だった。でも仕事をする中で、職場の誰よりも優しかったその人を見て、優しいという形も人を思うということも見えるものが全てではないと再認識した。
だから私も優しいあの人に見倣って「人の気持ちなんてわからないよ」と言う。わからないからこそ、わかるようになりたい。人の気持ちを理解した気になって、人を掌握できるなんて勘違いしたくない。
「わからないから、あなたのことを教えてください」
いつもそんな気持ちでいたい。