この記事は?
この記事は Scrum Master Advent Calendar 2025 の15日目の記事です。
昨日は一條さんの「自信はないけど、スクラムマスターとして手を動かしてきた1年をふりかえる」でした。
この記事のイメージ
Gemini banana proに作ってもらいました。起承転結のイメージです。

あなたは誰?
SIer企業の中でスクラムマスターとして活動しているkanami-です。
私は現在、顧客企業、私が所属するSIer、そしてビジネスパートナー(BP)社という3社以上の混成のチームで、システム構築・保守の現場に立っています。
現在の案件に参画してもうすぐ2年。幸いなことにメンバーの離脱や入れ替わりもなく、安定したチーム運営ができています。 私の「これ変えてみよう!」という唐突な提案に対しても、意見を交わしながら柔軟に受け入れてくださるプロダクトオーナー、そして開発者の皆様には、この場を借りて感謝いたします。
今日は、そんな恵まれた環境の中で、私が1年目に陥っていたある盲点について、ふりかえりします。
スクラムマスターが持つ責任とは
さて、スクラムガイドにはスクラムマスターが持つ責任範囲についてこのように記載されています。これはどんな立場の方がいるチームでも変わりません。
スクラムマスターは、スクラムガイドで定義されたスクラムを確⽴させることの結果に責任を持つ。スクラムマスターは、スクラムチームと組織において、スクラムの理論とプラクティス を全員に理解してもらえるよう⽀援することで、その責任を果たす。
スクラムマスターは、スクラムチームの有効性に責任を持つ。スクラムマスターは、スクラムチームがスクラムフレームワーク内でプラクティスを改善できるようにすることで、その責任 を果たす。
私もスクラムマスターに参画したからにはと意気込み、スクラムチームとして成果を出すために様々なチームメンバーの話を聞き、改善に取り組んでいきました。
1年目で気づけなかったSIer側のマネージャの苦しみ
プロジェクトに参画して最初の1年間は、今までのスクラムチームのやり方を理解し、そのチームが改善できるところを中心に取り組みを行い、スクラムチームの進め方を時期毎に少しずつ変わっていったと思います。
この成果として、チームの中で自律的に自分たちがやるべきことを定義し、計画し、進めていくことができるようになりました。
これらの活動はプロダクトオーナーを通じて顧客側のマネージャにも伝わり、フィードバックを得られていたため、とても理想的な関係だと考えています。
しかし、1年目の終わりに自分が所属するSIerのマネージャに成果を報告した時、予想外の反応が返ってきたのです。 マネージャは「よくやってくれているね」と喜びの言葉をくれましたが、その表情はどこか苦しそうで、曇っていたのです。
プロジェクトはうまくいっているはずなのに、なぜマネージャは苦しい顔をしているのか? 当時の私にはそれが理解できませんでした。
「有効性」を示す相手を間違えていた?
後になって分かったことですが、SIer側のマネージャは板挟みになっていました。 顧客からは「良いチームだ」と評価されている。しかし、SIer側として求めている成果(例えば、社内へのナレッジ展開、ビジネス的な拡大、利益率など)が十分に見えておらず、社内調整に苦労していたのです。
その時気づきました。私は「SIer側のマネージャ」に全く目を向けていなかったのです。
プロダクトが順調にリリースされて評価されているので大丈夫だと思い込み、自社のマネージャがチームを維持するために戦ってくれている「社内」という戦場を無視していました。 「自分たちの利益にならない」と会社に判断されれば、最悪の場合、チームの解散やメンバーの入れ替えが発生するかもしれません。実は、チームを維持するための最大の障害は、自分が見てないところにあったのです。
2年目に挑戦した、有効性を示す相手の把握と調整
これらを鑑み、2年目はスクラムチームの中の活動をプロダクトオーナーや開発者の皆様に色々お願いし、SIer側のマネージャやステークホルダーの情報を整理し、スクラムチームとして有効といえるかという活動に挑戦していきました。
例えば、1年目では関係図をこのように下記、顧客側の関係者を中心に整理していました。

2年目からは関係図を以下のように更新し、顧客側だけでなく、SIer側、またそこに所属するBP社側の関係者を確認し、調整に動いていきました。本来はBP社や別会社の方が入るのでもっと複雑です。

SIerやBP社のマネージャにはそれぞれの利益や成長につながる成果を求められるので、今までとみている観点、あるいはチームが成果として出してもあまり気にされない観点など、今までと異なる世界がありました。今まで出してきた成果の中からその世界向けの成果へと変換し、常に状況が見続けられること。また、それが自分だけでなく、マネージャやその上の経営に関わる方々にも伝わるように見える化していくこと。
そのために色んなプラクティスを試してみたので、スクフェスやこのブログでOutputできればと思います。ただ、確実にいえることは1年目より2年目の方が色んな世界の中の立ち位置を感じ動くことができるようになりました。そして自分だけでなく、チームの皆さんにも必要だと感じてもらえるようになってきています。
youはスクラムの有効性を「誰に示す」?
もし今、あなたがスクラムマスターとして活動しているなら、改めて問いかけてみてください。
「あなたは、誰を観察し、誰に対して有効性を示そうとしていますか?」
身近なプロダクトオーナーや開発者を観察し、改善することはもちろん重要です。しかし、SIerや受発注関係のあるプロジェクトにおいては、それだけでは不十分なことがあります。
このチームを組成し、維持するために尽力してくれている「マネージャたち」は、日々どんなミッションを持っているのでしょうか?
彼らのミッションに対して、スクラムチームとして貢献できることは何ですか?
どの立場から見ても「このチームには価値がある(存続させるべきだ)」と思ってもらうこと。それこそが、チームを持続可能にするための第一歩です。
スクラムマスターになったなら、ぜひチームの内側だけでなく、一歩外側も見てみてください。そこで誰かが、あなたのチームを守るために苦労しているかもしれません。その人の荷物を少し一緒に持つことが、結果として最強のチーム作りにつながるはずです。
明日は
naibanさんの記事です。色んなスクラムフェスで講演されていて熱い方なので明日も期待!
これからもお楽しみに!!