憧れの個人サイト

か燃
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Blueskyの検索ワードに「個人サイト」を入れてはしばし眺めることを繰り返している。

Blueskyはユーザー名に独自ドメインを当てることができるから、ドメインを持っている人はちょっと得意げに設定したユーザー名を披露したりしている。なんだか楽しそうだ。あわせて自分のサイトを紹介していたり、昔ドメインを買ったときの思い出を書いていたり、そんな話題を目にすることが多い。だからだんだん個人サイトへの憧れが復活してきた。私も持ってみたい。自分の城を。

インターネットに触れた最初の記憶はどこかの誰かが作った同人サイトだった。そこの掲示板に挨拶を書き込んだのがインターネットにおける私の産声だ。それからいろいろなサイトを見て回った。ホームページはどれも個性的で管理人の好みが大いに反映されていた。かっこいいサイトのマウスカーソルは十字だったし、文字が小さい小説サイトはアイコンもこまごまとしていて病院のようなカラーリングだった。廃墟サイトのBGMはMIDIでかまいたちの夜の耳コピBGMが流れた。みなホームページの中で自分や自分の好きな世界を表現していた。素材サイトというものを知り、ブックマークに軒並み登録していった。いつか自分もこれを使ってみたい、自分ならこんなホームページを作りたいと思うようになった。個人サイトにずっと憧れていた。

それから自分でもホームページを作った。パソコンのソフトウェアがまだ箱に入れて売られていたころ、ホームページビルダーではないホームページ作成ソフトを買ってもらって作ったものだ。お子様向けのお子様ホームページだった。拙い二次創作小説とイラストを掲載した。今おもえば間違いなく自分だって個人サイトの主だった。ちゃんと自分の城を持てていた。でもサーバーはソフトウェア側が用意する無料サーバーだし、URLも憧れていたHPのようなすっきりしたものではなく、ぞろぞろと長くて覚えづらいものだった。HTMLの知識が無くても簡単に運営できたが、お洒落なカウンターは置けないし、素材サイトでダウンロードしたハイコントラストでじゃぎじゃぎになった写真(電柱や青空が定番だった)をページの右下に固定する背景設定はできなかった。当時の自分にとっては「個人サイトごっこ」で、いつか個人サイトを持ちたいと憧れていた。

他人の個人サイトを見ているといつもこの頃のことを思い出す。いまならサーバーを借りることもできるし、知識がなくてもワードプレスの導入くらいは調べながらできそうだ。今の自分なら作れるかもしれない。個人サイトを。

…とはいえ「個人サイトごっこ」を興じていたころから失ったものがある。とても悲しいことなのだが、コンテンツをいま自分はなにも作っていない。城を作る前に国を興さないといけない。レンタルサーバーや独自ドメインよりも紙とペンを持つべきだし、いま叩いているキーボードでなにか書くしかない。すっかり忘れてしまったが昔の自分はどうしていたんだろう。コンテンツが先か、ホームぺージが先か。自分の性格を考えると、城を建ててからなんとか中身をしつらえたのかもしれない。

@kanenn
文章を書く練習