こんなことを書くと人非人と罵られるかもしれないが、うつ病を抱える人間の世界観がけっこう好きである。
あらゆる表現の底に必ず、悲しみとやりきれなさの暗く冷たい川が滔々と流れている。黒々として底知れず、身を沈めればたやすく生命力を奪い、誰しも疲れ果ててしまうだろう。決して枯れることのない嘆き。
ケーキを食べておいしいと思う、ちいさな生き物を見かけてかわいいなと微笑む、友人と話して楽しいと笑う、その全ては嘆きの川の傍らで咲く。悲しみの上に咲く。だから大切なのだと、自分だけはわかる。忌み嫌われるような不吉な景色をこころに秘めて、小さく笑うひとびとよ。
そうした世界観をわたしは好ましく思う。