※虫注意(という注意書きが必要な存在について)

蟹江カルマ
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公開:2025/5/15

Gの見た目をした主人公の話です。閲覧注意。

なんの因果か、頭にGのつく昆虫の姿に生まれてしまった。話ができるぶん、かの有名な先駆者ザムザ氏よりは少し幸福である。

幼稚園の先生に、「わたし今日お母さんに叩かれたの!」と憤然と訴えたところ、「それはたぶん事故よ」「夜中見たら誰だって……ね」と苦笑いされただけだった。これが物心がついたころの最初の記憶だ。

見た目のせいで友だちはいなかったし、あまりに違いすぎてこちらも友だちになりたいと思わなかった。わたしに似た王子様と結婚するのを夢見て、ひとりで遊んでいた。育ってから判明した。そのような王子様は存在しなかった。あるいは存在したとしてもわたしよりずっと小さく頭も悪かった。手遅れになる前にもう少し早く教えてくれ。

こういうものだと思っていた見た目は、育つとともに他人との比較が始まり、わたしはやがて常識を持ってしまった。鏡を見ると巨大なGが目の前にいるというのは、常識的には地獄絵図だったのだ。知らなかった。わたしはけっこう美しいつもりだった。

最近は小さな犬を飼った。うちの犬をかわいそうだと言う人はいるが、実のところ犬はあまり見た目にこだわらない。ゆらゆらとしっぽを揺らす犬といっしょに、空の下で風に吹かれる。触覚がそよぐ。わたしを避けているのか、まわりには人がいない。ちょうどいい。他人はわたしを見て悲鳴しかあげないし、うるさくて嫌いだ。わたしは犬を撫でる。せいぜい十五年の命に、わたしの全世界が詰まっている。

@kaniekarma
創作BL小説を書いています。 lit.link/kaniekaruma