さて、食事や睡眠などの休息も、ヒトの多くにとって、そのような部屋のなかでおこなわれます。わたしが研究しているエリアでは、ヒトは高いコストを支払って小さな部屋にすみます。転んでもやっと壁にぶつからないくらいの大きさです。
ヒトは、そこにヒトの作ったもの(ただし、ヒトが作ったことの痕跡は消し去られています)を揃えて、たとえば寒さや暑さに耐えます。くるまればあたたかい布や、つめたい風がでる機械など。ヒトはこのように、部屋にいろいろなものをしきつめて自分を囲っていきます。
寝具、机、棚、もの、もの、もの。部屋の「空白」は、どんどんと小さいものによって埋められていきます。説明しがたいですが、その運動は、欲求とも焦燥とも、あるいは外からの強制的な執行とも、どうやら判別のつきづらいもので、治らない傷を埋めるように小さいものが絶えず積み重なっていきます。
わたしはこういう仕方にあまりなじみません。フィールドワークの一環としてこうしたこともやってみるべきかとおもい、実践していたこともあるのですが。(つづく)