257話

karenohaka
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 驚きと期待、永遠の予感に思わず読んでいてめまいがした。当たり前に全く寝付けず、ベットの上で五夏に思いを馳せていたらいつの間にか朝が来ていた。一晩経った今も半分くらい放心状態。

 なんだかもう胸がいっぱいいっぱいで、代わりに脳内を文字で満たして気を紛らわせようと枕元に積んであった雑誌を手に取った。

 雑誌スピン4号。最果タヒさんの呪術廻戦キャラクターをテーマにした詩が載っているページ。

 何度も読んだ詩だけれど、257話を経るとさらに深くから込み上げてくるものがある。自分なりに満足して、もしくは悲劇の中で生涯を終えた若者。またはその最中の若者がテーマになっているからだろうか。

 久しぶりに読んでいたら、もはや何に心が揺れているのか分からないくらい次から次へと涙が溢れてきて何も手につかなくなってしまった。

 乙骨くんの大切な人のためならどんなに残酷な力の行使もできる異質の精神、限定の優しさ。真希さんの生まれた瞬間からある不遇や困難を「それでも自分を見つめる妹がいる」から諦めず決して足を止めない力強さ。野薔薇ちゃんの愛する人々に出会った幼少の挫折を越えて、自分だけの美しい茨道を肌を傷つけながらもぶれることのない芯の強さで迷わず切り拓いてゆくまっすぐさ。純平くんの他者への軽蔑と善良になれない自己嫌悪、それでも美しい人たちへの尊敬と羨望を正しく持てるやさしく傷つきやすい若い心根。

 私の好きな人の苦悩に満ちた短い人生を考える。三年にも満たないあの美しい盛りの間だけが、彼が彼らしく生きることができた最も幸福な時間だったのではないか。このことを考えるといつも苦しくなっていたが、236話があり、257話で魂の循環が明言された今、ずいぶん心が穏やかになった気がする。

 魂は巡り、再び出会える世界。もうこんなの...やっぱりあの空港は再び輪廻の輪にのる前の魂の停留所のような場所だったんだと思う。

 冷静に考えれば前々から感じていたことではあるけれど、それはそれとして、こんなふうに公式で魂の行方についてはっきりと(しかも片割れがいた宿儺によって)言及されたらもうこちらは受け取るだけで精一杯になってしまう。

 ところで双子の魂って元は一つなのかしら...そうしたら言葉の通りに片割れだ。17巻を改めて読むと宿儺のいう片割れの存在が気になって仕方ない。

「アンタは私で 私はアンタなの」

 はたして宿儺は一卵性双生児だったのだろうか。だとしたら片割れを胎の中で取り込んだことで真希が真衣の死によって覚醒し、呪術的な存在として完全体となったように、宿儺はこの世に生れ落ちる前にすでに完成されていた。宿儺の残虐性は胎の中にいたときからのものだというのは、なんとも魂の罪が重い気がしてならない。

 けれども宿儺の知っている「愛」が、自分が取り込んだその片割れのことなのだとしたらどうだろう。宿儺は露悪的な言葉遣いにまったく遠慮がないのであのように「自分が食ってやった」と言っているが、もしかすると、胎の中にいた頃、母の体が弱っていく中で、意識があった兄が後の宿儺となる弟のことを助けるために自分を食わせたというのも、またあり得るのではないだろうか。

 このあたりはホラーと異形愛好家としてもすごく気になるので先生がきちんと描いてくれることを祈っている。

 そして一卵性双生児が魂の次元で同一とされるなら、はじめから対となっている魂というのもあるかもしれない。

 わたしは、これはむしろロマンチックだと思っているのだけれど、悟と傑はそういった世界の理から外れたところで出会った、心ある個人が自らの意思で選び取った運命というか、なるべくしてそうなったのだけれどそれは決して(矛盾しているけれど)予定調和ではないみたいな、そういうふうな唯一無二の存在なのではないだろうかと思ったりしている。

 虎杖くんについて。

 ラスボスの宿儺との間に思いもよらない深い因縁があり、出生は意図されたものであったとしても、彼の仲間に助けられながら何度も立ち上がる精神は主人公でしかなく、そこが個人的にはいつでもすごく興奮する。

 伏黒くんを救えるのは虎杖くんしかいないと思うし、もし宿儺の現世への執着というか...人としての生を終えて死蠟となっても鎮まることのなかった魂の根源的ななにかを解消できるとしたら、それも宿儺の片割れの血を引く虎杖くんだけなのではないかと思う。

 まだたったの16歳なのにあまりに背負うものが多すぎるね...。

 呪術廻戦ほんとうに面白い。来週も楽しみだけど、月一更新でもいいしなんなら一年くらい休載しても全然いい。永遠に終わってほしくない。わたしの人生のうちに出会えたとくべつに素晴らしいものの一つ。

 236話もまだ噛み締めているところだっていうのに、どうやら私の心は休まるひまがないみたい。こんなに幸せな苦しみは他にない。

***

 追伸:今ふと思い出したけれど、昔読んだホラー小説で魂の根源とその循環、そして例外について…みたいなのをテーマにしたものはいったい何の本だったっけ。断片的にしか思い出せない。というかこういうテーマはホラーにありがちなので、別々の内容が混ざっているかもしれない。

 私がホラーが好きな理由はまさにこういう、未知へ恐怖と同時に果てしない好奇心が止まらないところ。そして優しい希望が垣間見える瞬間。

 本が出てきたら追記しよう。

@karenohaka
昼に眠り夜に歩く者は、精霊ではなく妖精に出会うであろう。