魔法の気配がする

katattu
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魔道士の火はパンを焼き国を燃しおびえる孤児に灯りを点し

波のない水面の月の輪をくぐり歌う女王のそのきざはしへ

この村の千歳以上の者はもう人を愛さぬ、立ち去るがいい

人は五度国の名を変え五度森を焼こうとしたな、立ち去るがいい

醜くて愚かですぐに死ぬ群れは付き合いきれぬ、立ち去るがいい

史書曰く 淡雪、天の女神より地底治むる兄への供物

翼また赤く掲げて戦旗 竜は大地を見捨てて久し

人の子よ、命短きそなたらの名を知ることが辛くてならぬ

人の子よ、幾度も作り壊してはまた作る手の哀(かな)し臈(らう)たし

人の子よ、ついに空をも飛べるのか火を撃つてわたしを殺すのか

若者は生前笑んで「影、もしも俺が死んだら身体を遣る」、と

血にやどる呪い果たして宿敵の姫の涙の碧に勝るか

余が悪か倒せばすべて解決か 勇者、世界を半分やろう

教会と王の悪意に甘んじて死ぬ気か、世界を半分やろう

人類が憎いさりとてひとりでは寂しい、世界を半分やろう

性嫌悪博士のうみし喰ふだけで殖えるインコが滅ぼした国

白イタチ駆る狩人のひようひようと鳴る葦の矢を聞いたら帰れ