ドイツ語

katsura
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公開:2025/1/30

大学の第二外国語でドイツ語を取った。先生はスラッとした40歳前後のイケメンで、独身だった。今はどうなんだろう。たまに彼女の話をちょっと顔を赤らめながらするかわいらしいイケメンで、学生にも好かれていた。でも変な人で、本当にすごく失礼だけどイケメンなのに独身だということに個人的にはとても納得していた。「リュックサック[Rucksack]は『背中ズタ袋』という意味です」といつも嬉しそうに話していた。

先生はイケメンだからきっとこれまでもモテてきたんだろう、女性ってどうしてこうなんだという話をしてくれた日があった。女性はなんで、僕のいないところで勝手に悩み、勝手に女性どうしで「相談」とやらをし、僕の知らないところで勝手に「そんなやつ別れたほうがいいよ!」と言い合い、勝手に意を決して別れを切り出してくるんだろう。女友達ってなんなんですかね。

ホントそうだなと思った。迷惑すぎる。女性の共感能力、面倒で迷惑すぎる。恋愛ってふたりの問題なのに、ふたりだけの問題なのに、部外者が悩んだときだけずかずか入ってきて「別れたほうがいい」とか言ってくるの、意味わかんなすぎる。それまで私もたくさんやってきたことだけど、先生の言葉にめちゃくちゃ同情してしまって、めちゃくちゃ腑に落ちた。

それから私は恋人とのことを人に相談するのをやめて、ひとりで抱えこんで悩むようになった。望んでそうするようになった。私と恋人だけの問題に、他人を部外者を触れさせないようにした。そうすると、まちがって悩みを人前に出してしまったときに、「自分ってこう思ってたんだ」「自分の気持ちを肯定して欲しかっただけだったんだ」とわかるようになってきた。

なんとなくモヤモヤしていただけのことを、言葉にして自覚してしまって、誰かに共感され肯定されてより強い自分の気持ちとして残ってしまうことに恐怖を覚える。言葉にしてしまうことで前に進んでしまうことが往々にしてある。それが良いときもあるけれど、知らないほうが、曖昧なままのほうがいいこともある。

結果として自分を苦しめてもいるけれど、それも全部ひっくるめて、ドイツ語を履修してよかったと心から思っている。肝心のドイツ語は自己紹介くらいしかできないまま。