私はダメなやつなので、先週金曜日の出張を飛ばしてしまった。
その日は珍しいことにそんなに体調も悪くなく、きちんと荷造りをして、飛行機に乗る準備も整っていた。
18時、いよいよ家を出る時間になり、普段引きこもっていることによる外出への若干の緊張を感じながらエレベーターを降りた。
目的地に行くための道順は、家を出る時間の情報とともにいつも Google マップに保存してある。
その瞬間に気づいた。
18時は家を出る時間じゃなかった。空港に到着しているはずの時間だ。
途端に頭が真っ白になり、強い吐き気を覚えてうずくまった。今からでもタクシーで行こうか? と思ったが、家から空港までは7,000円ほどかかる。無理だ。だいたいタクシーに乗っても間に合わない。
動かない体を無理やりエレベーターに乗せ、命からがら自宅に戻った。
泣きながら翌日のギリギリ間に合う便に振替をして、ホテルは一泊分キャンセルした。始発で行っても飛行機の出発に間に合わないから、空港近くのネカフェで一泊することを決めた。
落ち着いてからシャワーを浴びてまた家を出る。
いつもそこそこ人の多い駅は最後の通勤ラッシュを吐き出し終わっていたようで静かだった。非日常になんだか元気になってしまい、私は無駄にコーヒーを買ったり写真を撮ったりしていた。
ネカフェに着いてすぐ、睡眠薬を飲んで眠りについた。明日こそは大丈夫、と信じて…
翌朝に目覚めると吐き気が止まらなくなっていた。無理矢理にでも行くべきだと分かっていた。けれど飛行機の中で吐いてしまったらどうしよう、出張先で吐いてしまったらどうしよう、と思うと行くことができなかった。
会社に連絡をしてすごすごと帰りの電車に乗り、最寄り駅で降りた頃、吐き気は収まっていた。
私はダメなやつだ。