意向を決める三大要素 ── HR Share Advent Calendar 2025 10日目

kazuki_yakitori
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公開:2025/12/10

この記事は『HR Share Advent Calendar 2025』の10日目の記事です。

https://adventar.org/calendars/11557

採用の現場では、意向を上げるためのテクニックがよく話題になります。 魅力づけ、条件提示、オファー面談での圧、口説きのスクリプト。

もちろん、どれもまったく無意味というわけではありません。 ただ、実際に候補者の心を動かしているものは、そういった「テクニック」そのものではないと感じています。

意向は情報で決まらず、体験で決まります。 そして、その体験を構成する要素は驚くほどシンプルです。

会社を好きになる理由も、辞退する理由も、最終的には 「どれだけ不安なく、自分の未来を想像できたか」 に集約されます。

その「不安なく未来を想像できる状態」をつくる三つの要素が、次の三つです。

  • 信頼(Trust)

  • 理解(Understanding)

  • 共感(Empathy)

ここからは、それぞれの要素について整理していきます。

信頼(Trust):態度・誠実さ・一貫性が会社の人格をつくる

候補者の辞退理由の多くは「条件」ではなく「不安」です。 そして、その不安の正体のほとんどは「信頼の不足」です。

信頼が生まれる最初のポイントは、実はとても小さなところにあります。 メールの返信速度や文章の丁寧さといった、日々のふるまいです。

返信が早く、言葉遣いも丁寧であれば、候補者は自然とこう感じます。

「この会社はきちんとしている」 「自分を大切に扱ってくれている」

逆に、返信が極端に遅かったり、テンプレートの貼り付けに見えたり、細かな気遣いが感じられなかったりすると、それだけで意向は一気に下がります。 候補者は、情報以上に「扱われ方」から会社の本質を感じ取るからです。

さらに大きな影響を持つのが、面接官のふるまいです。 候補者にとって、面接官は会社そのものに見えます。

例えば、次のような態度は、候補者に安心感を与えます。

  • 話を遮らず、きちんと最後まで聴いてくれる

  • 質問の意図をきちんと説明してくれる

  • 良いことだけでなく、課題も誠実に語ってくれる

  • 面接官ごとに言うことが変わらず、一貫した姿勢で接してくれる

こうしたふるまいの積み重ねが、候補者の心理に「ここは信頼しても良さそうだ」という感覚を育てていきます。

信頼は、派手なアピールでは生まれません。 誠実な態度をどれだけ積み重ねられるかで決まります。

そして、信頼残高が一定量を超えたとき、候補者は初めて 「この会社に、自分の未来を預けてもいいかもしれない」 と感じられるようになります。

理解(Understanding):業務内容・文化・課題のリアルが伝わるか

意向は「ワクワク」でだけ上がるように見えますが、実際には逆です。 人は、不安が解消されたときに初めて前に進めます。その不安を減らす最大の要素が、「理解の解像度を上げること」です。

候補者は、次のような点が曖昧なままだと、不安を抱えたままになり、結果として辞退につながりやすくなります。

  • 自分に期待される役割がはっきりしない

  • チームの雰囲気がまったく想像できない

  • 入社後、最初にどんな課題に向き合うのかがわからない

  • 何をもって評価されるのかが曖昧なまま

理解が曖昧な状態では、候補者は「自分の未来の一日」をイメージできません。 その結果、「なんとなく不安だからやめておこう」という判断になりやすくなります。

反対に、次のような情報が丁寧に伝わると、候補者は大きな安心を得ます。

  • 役割と期待値が、具体的な業務イメージとともに言語化されている

  • 組織の課題や弱みも隠さず説明されている

  • チームメンバーとのカジュアル面談で、日常の雰囲気が伝わる

  • どんな環境で、どのような成長機会があるのかが明確になっている

理解は、「期待」と「不安」のバランスを整える装置です。

理解の質が高い会社は、候補者に 「ここで働くイメージが持てた」 という納得感を提供できます。納得は、口説きや説得からは生まれません。 十分な理解からしか生まれません。

共感(Empathy):ビジョン・仲間・価値観が自分ごとになるか

候補者が最終的に「ここで働きたい」と感じる瞬間には、必ず共感のスイッチが入っています。ここでいう共感は、「理念に同意しています」という表面的なものではありません。 もっと具体的で、もっと感情に近いレベルのものです。

例えば、こんな感覚です。

  • 一緒に働く仲間の価値観に共感できる

  • プロダクトの未来に対して、素直にワクワクする

  • この環境なら、自分はもっと成長できると感じる

  • “ここで働く自分”の姿が自然と頭に浮かぶ

「何をやるか」よりも、「誰と、どんな価値観で働くか」を重視する人は確実に増えています。 そのため、ビジョンやミッションをきれいな言葉で語るだけでは不十分です。

候補者が共感するのは、理念が「言葉」ではなく「態度」として落ちている瞬間です。

例えば、次のような場面です。

  • 経営陣が、スライドではなく自分の言葉で未来を語る

  • 面接官が、自身の価値観やキャリアの選択理由を飾らず話す

  • メンバーが、挑戦や失敗のエピソードを率直に共有してくれる

こうした「リアルな温度」のあるやり取りがあると、候補者は会社との距離を一気に縮めることができます。共感が生まれたとき、候補者の中で 「この会社と一緒に未来をつくりたい」 という自分ごと化が起こります。

三大要素は足し算ではなく掛け算

信頼・理解・共感の三つがそろうと、意向は自然に高まります。よくある誤解は、 「魅力づけさえできれば、意向は上がる」 という考え方です。

しかし、魅力だけでは人は動きません。

  • 信頼がない魅力は、そもそも信用されません。

  • 理解のない魅力は、「本当に大丈夫だろうか」という不安を残します。

  • 共感のない魅力は、頭では納得しても心が動きません。

意向とは、

  • 信頼 × 理解 × 共感

の掛け算でしか成立しません。 どれか一つでも欠けていると、候補者は安心して前に進めません。

意向とは感情ではなく構造でつくるもの

採用は、候補者の感情にひたすら訴えかける「説得のゲーム」ではありません。 候補者の不確実性を減らし、未来を想像できるようにするための「構造のデザイン」です。

その構造の中核にあるのが、次の三つです。

  • 信頼が、候補者の心を開く

  • 理解が、不安を減らす

  • 共感が、「一緒に未来をつくりたい」という意思を生む

この三つがそろったとき、候補者の意向は「上げるもの」ではなく、自然と「整うもの」になります。

意向は、無理に押し上げるものではありません。 説得するものではなく、候補者自身が納得して選べる状態をつくることです。

これが、格納情報から一貫して導かれる、採用における本質だと考えています。

@kazu_yakitori
採用や組織作りみたいな事をやりながら、猫と暮らしてます。XやLinkedInとは違い、頭の中に感じたことをただただ書いています。アドベントカレンダーの投稿も行います。