
この記事は『HR Share Advent Calendar 2025』の20日目の記事です。
日本の人口は、約1億2,300万人。この数字だけを見ると、「人はたくさんいる」と錯覚しがちです。では、日本にエンジニアは何人いるのか。
各種調査を踏まえると、2023年時点で、日本のエンジニア人口は約144万人と言われています。ここで、採用に関わる人ほど一度立ち止まって考えたい。
144万人。
多いでしょうか。少ないでしょうか。
採用は、母数を置かないと現実が見えません。 そこで、以下の前提を置いてみます。
エンジニア人口:144万人
転職を検討している層:10%
その中で、自社のペルソナに合う人:20%
この条件で計算すると、
144万人 × 10% × 20% = 約2万8,800人
つまり、理論上、転職を検討しており、かつ自社のペルソナに合致するエンジニアは、日本に約2.8万人しかいない、という計算になります。
「2.8万人もいる」のか、「2.8万人しかいない」のか
ここが、採用の分かれ道だと思っています。
2.8万人もいる。 2.8万人しかいない。
どちらの前提に立つかで、 採用の設計も、態度も、行動も、すべて変わります。
もし「もいる」と思った瞬間から、
スカウトは数打ちになる
面接は消耗戦になる
合わなければまた採ればいい、という思考になる
でも、現実はそう甘くありません。仮に、スカウトの返信率が10%だとします。
理論上は、
100通送って、10人と会える
200通送って、20人
300通送って、30人
ただし実務感覚では、 「返信=即面談」ではないため、実際にはもう少し減ります。つまり、 1人と会うために、何十人に声をかけている世界です。
この構造を踏まえると、 会える1人の重みは、相当大きいはずです。
大事なのは「会いたいと思わせた上で、スカウトする」こと
スカウトは、いきなり送るものではありません。
会いたいと思ってもらう
その上でスカウトする
多くのスカウトがうまくいかない理由は、 ①がすっ飛ばされているからです。
どんな思想でプロダクトを作っているのか
どんな悩みや葛藤を抱えているのか
どんな人と、どんな未来をつくりたいのか
こうした情報が先に差し出されていない状態でのスカウトは、 相手から見れば、ただの「要求」に映ります。
会えた瞬間は、もう勝負ではない
カジュアル面談や面接は、 選ぶ・選ばれる場だと思われがちです。しかし、2.8万人しかいない世界では違います。
あの時間は、関係性が始まる瞬間です。
この会社は、誠実に向き合ってくれるか
この人たちは、人を大事に扱っているか
候補者は、 質問の内容以上に、態度や空気でそれを判断しています。雑な対応をした瞬間に、 「縁があったかもしれない人」を、静かに失っています。
入社はゴールではなく、責任の開始
縁があって入社してくれた人は、 「採用できた人」ではありません。人生の一部を預かる存在です。
期待はきちんと伝えられているか
活躍できる環境は用意できているか
合わなかった場合、どう向き合う覚悟があるか
ここが曖昧なまま採用すると、 採用しているようで、実は人を消費しているだけになります。この考え方は、 人事だけが持っていても、正直意味がありません。
面接官が「忙しいから適当に」
マネージャーが「合わなければ次」
経営が「人は市場にいるでしょ」
この状態では、採用体験は必ず壊れます。だからこそ、 採用に関わる人やマネージャーこそ、このスタンスを持つ必要があります。
「この人は、日本に2.8万人しかいない“今、転職を考えており、かつ会うべきエンジニアの一人”」
この前提に立てば、
面接準備が変わる
聞く質問が変わる
合否の出し方が変わる
入社後の関わり方が変わる
自然と、丁寧になります。
採用は、母集団ではなく「出会い」を扱う仕事
採用は、出会いを大事にし、関係性を育てる仕事です。 2.8万人という数字は、母集団の話ではありません。
ひとりひとりが、二度と同じ条件では出会えない、 希少な出会いの総数です。
この前提に立って採用を設計できる組織は、 短期的な効率よりも、長期的な信頼を積み上げていきます。
そして結果的に、 「この会社となら働きたい」と思われ続ける組織になります。