無尽蔵ではない出会いを、どう扱うか ── HR Share Advent Calendar 2025 20日目

kazuki_yakitori
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公開:2025/12/20

この記事は『HR Share Advent Calendar 2025』の20日目の記事です。

https://adventar.org/calendars/11557

日本の人口は、約1億2,300万人。この数字だけを見ると、「人はたくさんいる」と錯覚しがちです。では、日本にエンジニアは何人いるのか。

各種調査を踏まえると、2023年時点で、日本のエンジニア人口は約144万人と言われています。ここで、採用に関わる人ほど一度立ち止まって考えたい。

144万人。

多いでしょうか。少ないでしょうか。

採用は、母数を置かないと現実が見えません。 そこで、以下の前提を置いてみます。

  • エンジニア人口:144万人

  • 転職を検討している層:10%

  • その中で、自社のペルソナに合う人:20%

この条件で計算すると、

144万人 × 10% × 20% = 約2万8,800人

つまり、理論上、転職を検討しており、かつ自社のペルソナに合致するエンジニアは、日本に約2.8万人しかいない、という計算になります。

「2.8万人もいる」のか、「2.8万人しかいない」のか

ここが、採用の分かれ道だと思っています。

2.8万人もいる。 2.8万人しかいない。

どちらの前提に立つかで、 採用の設計も、態度も、行動も、すべて変わります。

もし「もいる」と思った瞬間から、

  • スカウトは数打ちになる

  • 面接は消耗戦になる

  • 合わなければまた採ればいい、という思考になる

でも、現実はそう甘くありません。仮に、スカウトの返信率が10%だとします。

理論上は、

  • 100通送って、10人と会える

  • 200通送って、20人

  • 300通送って、30人

ただし実務感覚では、 「返信=即面談」ではないため、実際にはもう少し減ります。つまり、 1人と会うために、何十人に声をかけている世界です。

この構造を踏まえると、 会える1人の重みは、相当大きいはずです。

大事なのは「会いたいと思わせた上で、スカウトする」こと

スカウトは、いきなり送るものではありません。

  1. 会いたいと思ってもらう

  2. その上でスカウトする

多くのスカウトがうまくいかない理由は、 ①がすっ飛ばされているからです。

  • どんな思想でプロダクトを作っているのか

  • どんな悩みや葛藤を抱えているのか

  • どんな人と、どんな未来をつくりたいのか

こうした情報が先に差し出されていない状態でのスカウトは、 相手から見れば、ただの「要求」に映ります。

会えた瞬間は、もう勝負ではない

カジュアル面談や面接は、 選ぶ・選ばれる場だと思われがちです。しかし、2.8万人しかいない世界では違います。

あの時間は、関係性が始まる瞬間です。

  • この会社は、誠実に向き合ってくれるか

  • この人たちは、人を大事に扱っているか

候補者は、 質問の内容以上に、態度や空気でそれを判断しています。雑な対応をした瞬間に、 「縁があったかもしれない人」を、静かに失っています。

入社はゴールではなく、責任の開始

縁があって入社してくれた人は、 「採用できた人」ではありません。人生の一部を預かる存在です。

  • 期待はきちんと伝えられているか

  • 活躍できる環境は用意できているか

  • 合わなかった場合、どう向き合う覚悟があるか

ここが曖昧なまま採用すると、 採用しているようで、実は人を消費しているだけになります。この考え方は、 人事だけが持っていても、正直意味がありません。

  • 面接官が「忙しいから適当に」

  • マネージャーが「合わなければ次」

  • 経営が「人は市場にいるでしょ」

この状態では、採用体験は必ず壊れます。だからこそ、 採用に関わる人やマネージャーこそ、このスタンスを持つ必要があります。

「この人は、日本に2.8万人しかいない“今、転職を考えており、かつ会うべきエンジニアの一人”」

この前提に立てば、

  • 面接準備が変わる

  • 聞く質問が変わる

  • 合否の出し方が変わる

  • 入社後の関わり方が変わる

自然と、丁寧になります。

採用は、母集団ではなく「出会い」を扱う仕事

採用は、出会いを大事にし、関係性を育てる仕事です。 2.8万人という数字は、母集団の話ではありません。

ひとりひとりが、二度と同じ条件では出会えない、 希少な出会いの総数です。

この前提に立って採用を設計できる組織は、 短期的な効率よりも、長期的な信頼を積み上げていきます。

そして結果的に、 「この会社となら働きたい」と思われ続ける組織になります。

@kazu_yakitori
採用や組織作りみたいな事をやりながら、猫と暮らしてます。XやLinkedInとは違い、頭の中に感じたことをただただ書いています。アドベントカレンダーの投稿も行います。