
この記事は『HR Share Advent Calendar 2025』の7日目の記事です。
採用は“人を連れてくる活動”ではありません。 どんな組織をつくり、どんな未来を実現するのか。その構造を形づくる経営プロセスです。
その中心にいるのが、リクルーターと Hiring Manager の 2 つの役割です。
リクルーターは「採用のOSをつくり、運用し、改善する専門家」。
Hiring Manager は「事業の主語として、未来のチームを設計する責任者」。
この2者が正しく連携したとき、採用は属人的なスキルではなく、組織の成長を支える“再現性のある仕組み”へと変わっていきます。
本稿では、それぞれの役割と、その関係性のあり方を紐解いていきます。
リクルーターの役割
リクルーターの役割を一言で表すなら、採用を「再現性のある経営プロセス」に転換することです。 その領域は大きく3つに整理できます。
採用OSの構築(プロセス・SLA・ナレッジ・評価軸)
候補者体験(CX)デザイン
データ分析・ボトルネック特定・改善の伴走
OS構築:誰が担当しても品質が揃う採用をつくる
採用OSとは、採用が個人のスタイルや経験に依存せず、一定の品質で回るための土台です。
プロセス設計
カジュアル面談 → 一次面接 → 二次面接 → 最終面接 → オファー → 承諾 → 入社
各ステップで何を確認するのか、誰が出るのか、どこまでできれば次へ進めるのかを明確にします。カジュアル面談は相互理解を重視するのか。 最終面接はWillとビジョンのすり合わせに集中するのか。 こうした設計思想を定義すること自体がOSづくりです。
SLAの定義
候補者体験を左右するレスポンス速度を明文化します。
「面接後24時間以内に社内フィードバックを集約」
「合否連絡は3営業日以内」
曖昧さを排除し、ムラが生まれない仕組みを整えます。
ナレッジの体系化
面接でよく出る質問、その意図、辞退理由、承諾の決め手など、採用に関する学びは蓄積しないと失われます。 リクルーターはこれらをNotionなどに構造化し、採用を“学習するシステム”に変換します。
評価軸のすり合わせ
スキル・マインド・カルチャーのどこをどう見るのか。 最低ラインとポテンシャル枠を定義し、面接官間の目線を揃えていきます。
リクルーターのOS構築は一度つくって終わりではなく、採用を進める中で常にアップデートされていくものです。
CXデザイン:候補者の意思決定を支える「信頼の旅」をつくる
候補者は、求人票や条件だけで意思決定しているわけではありません。
返信の速さ
文面の温度
面接官の態度
課題の伝え方
体験として積み重なるすべてが、「この会社を信頼できるか」の判断材料になります。
リクルーターは、この候補者体験(CX)をストーリーとしてデザインする役割を担います。
例えば、、、
ファーストコンタクトでどこまで伝えるか
カジュアル面談で誰と会ってもらうか
面接前後にどんな情報を渡すと不安が減るか
オファー前後にどんなコミュニケーションを挟むと安心できるか
場当たりではなく、一連の体験として設計することが重要です。
具体例として、、
選考の中盤で現場メンバーとの1on1を入れ、働く日常をイメージできるようにする
オファー面談では条件の説明に留まらず、期待する役割と見ている未来を言葉にする
承諾後〜入社までオンラインランチやSlackで接点をつくる
こうした積み重ねによって、候補者の「信頼残高」が増えていきます。 リクルーターは調整役ではなく、候補者体験を生み出すCXプロデューサーなのです。
データ分析・ボトルネック特定・改善の伴走
採用は感覚で語られがちですが、どこで何が起きているかを正しく捉えるにはデータが欠かせません。
リクルーターが見るべきは、
どこで候補者が離脱しているか
どのチャネルの候補者が活躍につながっているか
どのフェーズで意向が上がりやすいか・下がりやすいか
といった構造です。
例えば、カジュアル面談 → 一次面接への移行率が低ければ、
面談の目的設定が曖昧なのか
話し方に課題があるのか
母集団のズレがあるのか
といった仮説を検証していきます。
最終 → オファー承諾が弱い場合は、
意向確認のタイミング
不安の解消度
条件説明に偏っていないか
といった観点で見直します。
重要なのは、リクルーターが一人で抱え込まず、Hiring Manager・面接官・経営と同じ“地図”を見ながら改善を進めることです。
Hiring Managerの役割
採用の主語は人事ではありません。 採用は事業の課題解決のために行われ、その主語を担うのがHiring Managerです。
Hiring Managerの役割は大きく3つです。
採用要件の定義
最終評価と意思決定
現場文化の語り手としての発信
採用のよくあるつまずきは、「人が足りない」という感覚的スタートです。
Hiring Managerが最初に取り組むべきは、
事業上の課題は何か
今いるメンバーではなぜ解ききれないのか
その課題を解くために必要な経験・スキル・スタンスは何か
その人が入ることでチーム構造はどう変わるのか
を構造化して言語化することです。
スペックだけを並べると“誰でもない誰か”を探す採用になります。 未来から逆算して必要な要件を定義することで、スカウト文にも面接にも説得力が生まれます。
Hiring Managerは、リクルーターがつくる採用OSの上に、どんなチームをデザインするかを決める存在です。
最終評価・意思決定:「誰と未来をつくるか」を決めるのは現場
最終的な判断は人事ではなく現場にあります。
評価・フィードバック
候補者のWillや価値観
チームとの相性
組織構造への影響
これらを踏まえ、採用/不採用を判断するのはHiring Managerです。
ここで重要なのは、判断が事業のWillとつながっていることです。
今期の成果に効くのか
中長期の戦い方を変えるのか
文化をアップデートするためか
短期的な便利さだけで判断すると、組織に歪みが生まれます。
現場文化の語り手:候補者に「ここで働く日常」を手渡す
候補者が強く意向を高めるのは、条件や事業内容よりも、
誰と働くのか
どんな空気の中で過ごすのか
のイメージです。
Hiring Managerはこれを一番リアルに伝えることができます。
日々の議論
未完成な部分
大事にしている価値観
活躍しやすいタイプ/しんどくなりやすいタイプ
こうした生の言葉は求人票には載りません。 正直に伝えることで、候補者は自分の意思で挑戦を選べるようになります。
リクルーターとHiring Managerは「主従」ではなく「共犯関係」
採用がうまくいかない組織には、「人事が候補者を連れてきて、現場は評価だけ」「現場がふわっと要件を投げ、人事が苦しむ」といった構造が多いです。
理想は、両者が専門性を持ち寄る関係です。
要件定義の主語はHiring Manager、構造化はリクルーター
判断の責任はHiring Manager、判断材料の設計はリクルーター
候補者体験の設計はリクルーター、そこで伝えるストーリーは現場
この関係が成立したとき、採用は単発の“採用活動”ではなく、 事業と候補者双方の未来を前進させる経営プロセスとして機能し始めます。
採用は、企業の未来そのものを形づくる行為です。 そのために、リクルーターとHiring Managerはどちらかが主役ではなく、共に未来をつくる“共犯者”として動く必要があります。
再現性あるOS、信頼を積み上げるCX、データに基づく改善。 そして、事業のWillから始まる要件定義と、現場が語るリアル。
この仕組みがそろったとき、採用は「出会いの場」ではなく、 企業と候補者の未来をつくる“戦略”へと変わっていきます。