昼夜逆転で自律神経が乱れまくっていて、調理どころが冷食を食った後の洗い物にすら手がついてなくて(自主規制)を毎日のように見かけてしまうレベルで二月は生活が終わっていた。掃除や料理ができないとかいうレベルじゃない。最低限生きていくための活動をするだけで精いっぱいだったりした。今もわりとそれに近いが、三日前ぐらいからようやく日中の活動をしだしたのでまあましではある。太陽光は偉大。
そんな終わっている生活の中でふと、プライベートなアカウントで「なんかいい感じに簡単でうまい飯教えてくれ」と言ったところ、人生で一番美味い手作りカレーを食わせてくれたことのある友人からおすすめの料理本が飛んできた。これだ。
18の頃から自炊をしているものの、一度も購入したことのなかった料理本。最近は自分がローテーション気味に作っていた食事だけではものを摂取するというモチベーションを保てず、ネットで検索したレシピを適当に作ったりしていたこともあって、今までスルーしていたような料理本を購入することにした。レシピを検索する人間は食いたいものや使いたい食材がある人間であり、終わっている生活で生鮮食品の買い出しに手がつかなかった俺は食材から何から外部から提案してもらうしかなかったというのも理由ではある。
そんなこんなで、正直そこまで期待せずに買った料理本だったが、なんとまあこれが想像以上に簡単で手間のかからない内容ばかりが書かれていて、無気力を極めて地を這うように労働していただけの俺でも手をつけてみるかと思えるようなレシピばかりが掲載されていた。
普段の料理の味付けをコンソメやら中華スープやら塩と味の素やら、わりと塩分と旨味に頼っている人間からしたら「これだけでほんとにうまいんか?」となるようなものも掲載されていたが、新しい方向性の味を開拓したいと思っていたので、試しにこの本に載っていたポモドーロを作ってみることにした。
レシピに忠実にならないと筆者の想定する味にならないのは理解していたので、まあ口に合わなくてもいいかぐらいの気持ちでオリーブオイルと少量の塩とトマトのみで作られた、にんにくも胡椒もコンソメもケチャップも使わない原始を感じるソースを作り、いつも通りに茹でたパスタと絡めて食べてみる。
ああすんごいトマト。あー凝縮ってこういう。そういやトマトって旨味だったわ。
とかなんとか思いながらするすると完食することができた。以降、俺はこのミニマル料理と名付けられたレシピと友人を完全に信用している。やっぱり料理がうまいやつがおすすめしてくる料理本ってすごい。