『サタンタンゴ』感想殴り書き

ケイ
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公開:2026/5/26

変態映画。こんな異様な映画を撮る監督は変態だと思うし、こんな異様な映画を観る側も大概だと思う。なんせ長さが尋常じゃない。7時間18分。長い。マジで長い。長すぎる。いままで見てきた映画の中で余裕の一等賞。しかもカット数が少ない。トータルで約150カットしかない。上映時間に対し反比例するような少なさ。ふと思い出したようにU-NEXTのシークバーを確認するとまったく動いてない。時が止まったかのよう。いや時が遅延したかのよう。さらに全編モノクロ撮影。ほとんどのシーンで雨が降ってる。美しいな、おい。なんだかもう夢みたいだよ。

観てると映画って何なんだろうって気分になってくること請け合い。カット割り、出来事、役者達の演技。そういう刺激を与えてくれる事柄にこだわるのがアホらしく感じられるほど静けさに満ちている。ドーパミンはぜんぜん供給されない。供給されるのは雨。雨の音。雨の音は常に響いている。タンゴの音楽や人々の会話といった人工的な音は途切れ途切れに加わるのみ。いいよね……雨の音って。

時間。映画ってつまり時間のことなのかな。私はいま時間を鑑賞してるのかもしれない、とか思い始める。物語なんて二の次三の次で、ただ流れる風景と共に時間を観ているような気がしてきた。時間とはなんだろう。朝起きて、飯を食べ、行動して、やがて日が暮れる。目覚めたときと同じように体力を保ち、同じように頭を働かせられる人はいない。大抵の人は疲労するから。生きてるとエネルギーを使うから。サタンタンゴを観ていても時間があっという間に過ぎるなんてことは無い。正直見ていてだんだん疲労してくる。内容のせいで、ではなくもっと単純に「時間経過」のせいで。しかし同時に見ていて心地よさも覚える。時間がゆっくり経つのは心地よいことなのだ。だから私はいま映画を体験しているのではなく、時間を体験しているのだろう。

そういえば数年前、TSUTAYAで『ニーチェの馬』を借りようとDVDパッケージを眺めていたとき、隣に立っていたおじさんに「それいいですよ」とおすすめされたことがあった。そして続いてタル・ベーラ監督の『サタンタンゴ』もおすすめされた。その時は借りなかったし、あれからだいぶ時間が経ったけれど、ようやく見れたよサタンタンゴ。どこの誰か知らないタル・ベーラおすすめおじさん、ようやく変態映画を観れました。こんな長すぎる映画を見ず知らずの私におすすめしてくれるだなんて、あなたもまた変態だったのですね。

押井守。ドゥ二・ヴィルヌーブ。濱口竜介。観ながら思い浮かんだのはそういう「映画の時間演出」を意識している監督。タル・ベーラは間違いなくその系譜に連なる、というかその根幹にいる人なのだろう。

ごちゃごちゃ書いてるけど、たぶん私はこの映画の本質を半分も理解できてない。何故なら映画館で観ていないから。これは映画館で観るべき映画だから。ここには時間しか無かった。映画しか無かった。であれば、映画館で観るのが自然なことだろう。嗚呼、なんだかとてもつかれたよパトラッシュ……。とても美しい映画だったね……おやすみ……。