取り返しのつかない過ちというのは、本人の思いもよらないところで起こるものだ。さらにたちの悪いことには、過ちを犯した後に振り返ってみると、それが過ちであることは明らかであり、いかに自責の念に駆られようともその過ちをなかったことにはできないということだ。
その日、彼は小学校の低学年くらいだったのではないだろうか。彼にはある趣味があった。それは、何でも分解して、中身を見てみるということだ。まあ、このくらいの歳の子にはありがちな趣味なのではないだろうか。少年は物を破壊し、中身の部品を集めることに明け暮れていた。コレクションは、ボールペンのバネ、ミニカーのゼンマイ、電卓の液晶画面などさまざまだ。
ふと、ビデオテープが彼の目に写った。これを分解すると、面白い部品が手に入るに違いない。そう思った時にはテープはぐちゃぐちゃに引き出され、見るも無惨な状態になっていた。そして、最後の部品までたどりつく。見ると金属片がケースに接着されているではないか。彼はハサミでその金属片を切り取ろうとした。しかし、紙を切るためのハサミで金属片に太刀打ちできるはずもなく、ハサミは刃こぼれしてしまった。
少年はその後も、刃こぼれしたハサミを使い続けるしかなかったのだった。