忌々しくて

kenshira
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 恨みを持つものがその恨みを晴らさずに死んでしまうとその強い怨念だけがその場に留まって具現化し、もはや生きていた時の記憶はなく別物と化した存在へと変貌を遂げたそれこそが、つまり幽霊そのものであり、これこそまさしく今後人類が探求すべき新たな研究テーマである。

 脚がなく白装束を着た髪の長い女だったり片腕を失ったまま体育座りで道路脇に佇む少年だったり超高速で走り出す老婆の目撃情報をあたかも妄想或いは精神疾患だと決めつける想像力のない人達への配慮として、納得できるような証明を今こそすべき緊急案件であるのがまだわからないのだろうか。

 湿度を帯びた足音も耳元で囁く呪いの言葉も何者もいないはずの空間で感じる何かの気配も不自然に浮かび上がる人型の影も海の底へと引きずり込もうする手に足首を掴まれたことも黒い水を見たことも唐突に肩が重くなったこともその場にいるだけで涙が出たことも記憶を失ったことも意味もなく叫んだこともなく生きていた人にとってその存在を肯定する理由はないのも確かだが、それを自分の能力が不足しているからだと理解する知能もないくせにへらへらと笑いながら馬鹿にするように話も聞かない。

 本物だけが知っているもう一つの世界の証明をとにかく急ぐべきであり共有して歩み寄る必要があってしかるべきで、その時を人々は待ち続けなければならないはずだ。

 そんな今を忌々しく思い嘆き葛藤し憤怒して諦めた結果が現状でそれをなんとかせんがためだけに存在するなんて馬鹿な理由かもしれないけど、人から見た存在理由なんてそんな些細な場合だってあることくらいはせめて理解できなくても許してほしいし否定しないでほしいし寛大になってほしい。

 今はもう考えることが単純になって爽快になって明確になったことでなんとか存在を維持できているし理由も生まれたし継続できているのに、そこまで拒否されたらではどうしたらいいのだろうかと困惑して動揺して震えて重くなっていく。

 どうかに理解されたいと思ってるのにされないこの焦燥感と高揚感と乱高下する感情は誰かに伝わればいいなと思うことが果たして悪いことなのか。

 生きてすらいないのに否定される存在の虚しさを誰が受け止めるのかと問うと、その存在を認識できるものだけにしか肯定されないから、もっと知ってもらい承認欲求ともっと理解してもらいたいと願うその望みが叶えられないのなら、何かを攻撃して理解してもらうしかないことに対しての検証もなされぬまま、ただただそこにいるだけになるではないか。

 忌々しくて残された残響はいつか風化するものではあるけど、せめてそれまでは誰かどうかお願いだから知っていてほしいし認識してほしいし無視しないでほしいし改めてほしい。

 自分の世界が常に当たり前なわけではなく疑うべきであるとそろそろ知ってもいい頃だと常日頃思いながらも他人事だからなという諦めもありつついつかきっと答えが見つかるだろうと楽観視しながら客観的に観察を続けてみようと思う。

 この続きはまたの機会に。

@kenshira1121
毎日一作品投稿する、予定。