「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」三宅香帆

なぜ働いていると本が読めなくなるのか 書影

子供の頃は学校の図書室や市立図書館に頻繁に通って、色々な本を読んでいた記憶がある。

それは勉強しようとかではなく、純粋に本を読むのが楽しかったからである。

働きはじめてから確実に本を読まなくなった。本を読もうという意欲がわきはじめたのも勤め人9年目に入ったここ最近のことだ。それまではドロドロに心身を病んだ時期に救いを求めて自己啓発本の類を読んだり、音楽活動にまつわるプロモーションに悩んでマーケティング関連のビジネス本をたまに手に取るくらいだった。

本書を読んで一連の自分の行動にかなり納得した。「好きなことを仕事にして全身全霊で働くことこそが素晴らしい」という現代の価値観を知らず知らずのうちに内面化しており、それが生きづらさや繰り返し自分を責めてしまう一因だったことが見えた。「なんでこんなに生きづらいのか」と思い悩んで手に取った自己啓発本からは得られなかった気づきだ。

自己啓発したところで苦しみの根本を断つことはできない。

でも苦しみを産む構造を把握するだけで、その苦しみを少し突き放して見ることができて楽になった感がある。

別の本の感想で、「個人の苦しみの原因を社会にもとめる人は自己責任論者にバカにされがちだと思う」と書いたことがある。

でも構造が把握できるだけで「なんで自分はこんなにダメなんだ……」から「あ〜そゆこと、了解了解〜〜(許さんけど)」というマインドになれるので、結果として建設的な行動に繋がりやすいと思う。

そして、構造というのはひとりの観測範囲で壁にぶち当たっているだけでは把握しにくい。だから蓄積された研究にアクセスできる読書は有効だと感じた。

働いてても余裕で本が読める世界であってほしいし、働きながら自分のやりたい活動を存分にできる世界であってほしい。

@kg_nuts_kg
IT企業に勤め、たまに音楽をつくるエイの天日干しの妖精です