会話なのに独り言になるとき

kikikomomi
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誰かと話していていて、言葉のキャッチボールをしているはずなのに、自分の話したい方向へ誘導を続けるともはや会話ではなく、独り言になってしまう。

相手の反応を先読みする

相手が何か質問をする。例えば、「Aさんと仲良くしたいけど、既に仲のいいBさんとAさんは仲が良くないので、Bさんと距離が離れたらどうしよう」といったような内容。

最適解がなく、正論もなく、この会話の中で絶対に解決しない内容の質問。

こんな質問であっても、相手の欲しい答えというのは少なからずあって、相手がよく思う反応を推測できる。

  • とりあえず、仲良くなってから考えればいいんじゃない?

  • Bさんとはちょっと距離が離れてもAさんと仲良くした方がいいよ

とか、じゃあその後の反応を考えて

Bさんはめっちゃ大事な友達だから...

  • とりあえず、仲良くなってから考えればいいんじゃない?

    • でもBさんは高校のときからの親友だから、絶対仲悪くしたくないよ

  • Bさんとはちょっと距離が離れてもAさんと仲良くした方がいいよ

    • そうかなぁ?Bさんはずっと友達だから、気まずくなるのはなぁ

わりと最近はBさんの愚痴も多いし

  • とりあえず、仲良くなってから考えればいいんじゃない?

    • 確かにAさんの方がBさんよりも今の自分と話してて楽しい

  • Bさんとはちょっと距離が離れてもAさんと仲良くした方がいいよ

    • まぁいっそ、それでもいいか。Bさんと完全に離れるわけでもないし

こうやって相手の反応を先読みして、この場合はこういう反応、こういう思考が前提にあるから、そこは絶対に潰さないように。完全に否定して私と相手の関係を悪くしないように。逆に関係が終わってもいいから、相手には自分の意見を通したいとか。

自分の目的を中心に相手の傾向と思考をトレースして会話していると、3つ先とか4つ先の言葉が推測できて、その人が話し始めた瞬間のテンションとか、頭に来る言葉で内容は全て想像ができてしまう。

相手の口から出た言葉は自分の中では既に分析が終了しているので、相手が言葉を練りだしている時間がもどかしく感じて、話し終える前に次の言葉を投げかけたり、端的な説明文として乗っ取ってしまったりする。

そうして自分の頭の中で描いた未来からそうそう大きく外れはしないから、それでも会話は続く...。

会話なのか独り言なのか

仮想的な相手を立てて質問形式で問題を解決していくという考え方が世の中にはある。自分の心を言葉にして口に出すと気が付く事柄があって、そうやって新しい着眼点が得られる場合がある。

だが、先ほどのように相手を先読みして、頭の中で全てトレースしてしまう会話では、独り言と何が違うのだろうか。相手はそこにいるけど、いわば鏡に映った自分と話しているのとどれだけ違うのだろうか。

相手も同じようにこちらの思考をトレースして先に先にと話を進めていくと、とんでもないスピードで話が進んでいって、読み合いが発生する場合がある。だが大抵は相手はゆっくりと口に出すときに物事を言語化していて、こちらとは言葉として形成されるタイミングが違う。それで会話のテンポがかみ合わない。

思考をわざと遅らせる

最も簡単で意識するだけでこの問題を解決する方法は、思考を遅らせて相手が文の全てを口から出し終えた後に、こちらも返答を考えるというもの。

ただこれは先ほどの会話と比べて、非常に時間がかかる。こちらが考えている時間と相手が考えている時間が存在するのでまぁ長い。そんで顔を突き合わせている時間が長いのに話が進まなくて、たくさん話した気持ちが残る。

いやだからこそ、日常のトークにはこちらのほうが何倍も何十倍もいい。会議やミーティングなどの建設的な話し合いには全く適していないが、日常会話ではこの方が相手が話しやすい。

相手の細かな一挙手一投足、言葉の端から端までを舐めるように分析して、未来を確定させる先の話し方は逆にできない人がいる。というか大抵の人は訓練をしないとできないらしい。なのでこちらがそのように話していると疲れるし、めんどくさい。

相手がもしも自分よりもよく話す人だと、勝手にギアを下げてゆっくり話すように調節できるのだが、(というかそうしないと疲れるので)自分がたくさん話す側の時にそれができない。

終わりに

話している自分を客観的に捉えるなんてここ最近になってようやく考えるようになったもので、前までは全く何にも考えていなかった。

先を読んで未来を考えながら話すと、相手の会話の重要度が減少して、こちらは疲れるし、相手は話した感があんまりない、悲しい会話になるので、やめたい。