そして、世界は泥である

kiku_y
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公開:2024/6/19

見に行ってきました。

01 御菩薩池(みぞろいけ)

なぜか、鉄桶に納められた泥が静かに止まっていること自体が面白かったです。

泥って液体の成分が結構多いはずですし(広く言えば流体?)、池の岸辺に集まっている泥や流木は、日光や雨など天候の影響を受けて形を保っているのではと勝手に想像したのです。

でも鉄桶に入った流木や葉はキュッと停止しているというか、沈まないのかなとか?こんなに池の一部として切り取られていても、流体のくせにキュッとなっている泥たち偉いなあ、なんて思ってしまいました。

しかしながら、やっぱり止まっている訳ではなくて、少しずつ微生物たちが動いているのでした。

目に見えないのに…ちゃんと動いてますよ、という事実を発電して光に可視化することで、「実は寝たふり〜、ほんとは起きてますよ〜だ」みたいに言いたいのかしら。可愛いなぁ泥!

いやはや人間も、地球の外から見たら動いてることなんて、分からないのかもしれません。小さくて目に見えないでしょうから…。

「実は引きこもりは昨日まで〜、ちゃんと今日は学校行ってますよ〜」可愛いなぁ人間!

04 Ethereal Voices

展示場所である元小学校の校舎の廊下からは、肩幅くらい足を開いて右へ左へ自分の身体の重心を移すと「ぎぃ、ぎぃ」と音がしました。

何回か鳴らす内に、自分の重心の音だ!これは!と楽しくなってしまいました。

窓に置いてあった苔から(日光を使って?)発電されているのかな、そこからスピーカが動いて、苔が普段聞いている音たち(Voices?)も聞くことができてしまった。

盗み聞きしてしまった罪悪感とワクワク感。

そして、再び私の体重で鳴る廊下。

流石に恥ずかしくなるわたし。

苔さん、普段池にいらっしゃる時こんな音聴いたことないですよね…?失礼しました。でもこれが、

私の質量が産む廊下の鳴りです。

05 Lila

学校の蛇口。懐かしい。あんな数並んでいるのは、やっぱり学校でしかないな、なんて。

ちょうど水が滴り落ちるくらいに緩められた蛇口からポトン、と一雫の水が落ちる。ほんの数センチだけ水が溜められた水面に向かって、ポトンと。

すると水面に映されたプロジェクターの映像が揺れる。物理の授業で昔みたことある綺麗な水の干渉、同心円状の波紋にそって揺れる。

まるで、学校の水飲み場が池みたいだった。でも綺麗な波紋。人工的な感じがするくらい等間隔な波紋。

でも不思議とポトン、と落ちた一雫を追いかけてしまう。なんだかそこだけスポットライトがあたっている感じがして、ゆらゆらしていて、池の中に吸い込まれていった。

トポンって音に変わった気がして、ワクワク、ドキドキ。

でも本当に私が池に入ったらトポン、じゃあすまないだろうな。

ドボン、だろうな。

だって質量あるもん。

06 そして、世界は泥である。

風の音が心地よい!

暗い中にキラキラと輝く和鏡。影と光が繰り返されるのを見ていると、なんだかもう何も考えなくて良い時間になった。

フラフラ浮いている感じもするし、深い深い池の底で寝そべっている感じもする。

泥になったのかしら。

気がついたら風の音が強くなった。しかも重なって、もう風の音なのかも分からなくなった。

人も話しているけど、内容がどうとかそんなのもどうでもいいや、と思ってしまう。

なんだか、恐いのに心地よい。ごおーっゴオーッてすごくザラザラとしたあの音。

眠くなって

産まれてくる前に聴いていた音もきっとこんな感じだったのかもしれない。

やはり、ねむくなって

気がついたら、静かになってしまったから立ち上がって、外に出た。

校舎のグラウンドに出た。

太陽が眩しかった。

現実に戻ってしまった。悲しかった。でも、少しだけ達成感。 

産まれて来た時も、泣いていたものね。きっと、こういう気持ちだったのかもしれない。

こうして、泥から出たのだった。

おしまい

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ガス欠になりそうな行きの車内で、鳴り響くROSIERを忘れることはないでしょう。

揺れて、揺れて、今心が

いや、揺れている場合ではない。ガソスタにまっすぐ走らなければならない!

なんて、面白い日だ。

おしまい

@kiku_y
デザインとかアートの世界に飛びこんでみた元ソフトウェアエンジニア