すっと心に入って来る小説がある。
すっと入って来た本はたいてい後を引く。
昔よりずっと後を引くようになった。いつまでも「あそこはああだよなあ」とか「あれはすごいなあ」とか「あれはああいうことなんだなあ」とかもやもやと引きずり、影響される。そのような本を読んだ後はこの感覚が上書きされるのがなんとなくもったいなくて、しばらく次の本に取り掛かることにためらってしまう。
一方で面白いはずなのに読み進めるのにとても苦労する小説もある。うんうん言いながら頑張って読んで行こうとするのだが、なかなか前に進めない。こんなに本を読むのはしんどいことだったかと戸惑う。若い頃は結構どんなものでも読んでいけたというのに。つまりは加齢とともに許容範囲が狭くなってしまったのだろうか。
脳の排水溝掃除をしなくてはと痛切に思う。たまったゴミを捨てて容量を増やさなくては。ゴミのせいで硬化してしまった脳の筋肉を解してやらなくては。そう考えて、最近はなるべく読書の時間を取るように心がけている。でもそれも変な感じだ。読書は特別な行為ではなく生理現象のようなものだったのに。