昔から読書が好きで、かなり子供のころから、いわゆる大人向けの文芸を読み続けてきた。
わりとなんでも楽しく読めるタイプで、手の届くところに読んだことがないものがあれば、自分で選んだものでなくても楽しく読んだ。
ところが、ここ数年、勝手が違ってきている。
読んでいると、飽きてしまうことが増えてきた。
自分の集中力の問題かなと思ってきたんだけど、どうも違う気がしてきた。
飽きてしまう文章には、傾向がある。
あれをした、これをした、そうしたらこうなった。
というような、出来事の羅列がそれにあたる。
「わたしは、恋をした。」「わたしは、そっと、扉を閉めた。」
こういうもの。
若い頃は、自分の経験が圧倒的に足りてなくて、人の経験であれ、なんでも新鮮で楽しかったのが、自分でも気づかぬうちにだんだんと大人になってきて、いまでは、経験そのものよりも、そのときそこにある感情こそが知りたいことになってきている。
前述の例でいえば、恋をしたと感じた瞬間に、あなたに見えていたものはなんだったのか、という、他人の、感情的な視点からの景色。
昼間の公園で、水飲みからジャバジャバと水が溢れているのをじっと見続けたとき、自分が恋をしていることに気づいた、みたいな、そういう描写を求めている。
経験や出来事があるとき、そこには必ず感情もあるはずで、それは人それぞれ、わたしがどんなに長生きしても、わたしがあなたのそれを得られることはない。
それを、よかったら、少しでいいから、分けて欲しい。