ラブカは静かに弓を持つ

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少年時代、チェロ教室の帰りにある事件に遭遇し、以来、深海の悪夢に苛まれながら生きてきた主人公の橘樹。彼は全日本音楽著作連盟に勤めている。ある日、上司の塩坪から呼び出され、音楽教室への潜入調査を命じられる。目的は著作権法の演奏権を侵害している証拠をつかむこと。橘は身分を偽り、チェロ講師・浅葉のもとに通い始める。師と仲間との出会いが、奏でる歓びが、橘の凍っていた心を溶かしだすが、法廷に立つ時間が迫り…

面白かった~!いろんな本があってどれも泣けたり好みだったりそれぞれだけど、こんなにページをめくる手がとまらなくて、終わらないでってなったのは久しぶり、というかここ数年ではいちばんかも。それくらい読んでいてドキドキしっぱなしだった。

橘がどんどん音楽や周りの人に対して心を開いていく描写が美しくて好きだった。ステージに立つと緊張でその時間何をしていたか覚えていないのも、楽器をする楽しさも、どれも手にとるように分かって、私のためにある本かもしれない、と思った。ホルンをやっていてよかった。そう思えてうれしかった。

また言葉に失敗したかな、と悩む橘の気持ちが分かりすぎで苦しかった。でも、だからこそ橘と同じように浅葉や教室の人たちに救われる心地がしたのだと思う。「自分のチェロを背負っても、ちゃんと家に帰れるよ」って言葉でぼろぼろと泣いてしまった。

橘さんがこれから輝く優しい人生をおくっていけますように。好きな音楽と人と、すべてに守られながら。

@kirakira227
日々のあれこれ